NO.7 呪いを打ち砕け
―『魔導大図書館』の役員である鈴菜。
大通りへ続く道を角で急に曲がり、靴がズザザザと音を立てる。
音が止むと同時にその場で立ち止まり、風に揺れる髪を軽く払った。
夕日の光に包まれ、濃いオレンジ色に染まる街を見つめる。
「……ここに現れるなんて、呪術師さん。どういうつもり?」
誰もいない静かな通りに向け、独り言のように呟く。
当然返事が返ることはない。だが、代わりに奇声が響いた。
呪術師――。その見た目は「個性」というには不気味すぎる異形だ。
悪魔を彷彿とさせる姿に、一般人が「化け物」と恐れるのも無理はない。
「よし……そこから引きずり下ろしてやる!」
鈴菜はズボンの後ろポケットに隠していた小型銃を手に取る。
ただの銃ではない。弾丸は魔術によってその場で生成する特別製だ。
右手に銃を構え、呪術師に狙いを定める。
「ついでに、その呪いからも解放してやる!」
そう言い放つと同時に、魔術で作り出した銃弾が銃口から発射される。
⸻
遠くから、さまざまな音が風に乗って聞こえてくる。
コンクリートの砕ける音、呪術師の奇声、人々の悲鳴――。
「スズ姉が命をかけて戦ってるのに……!」
アヤメは怒りと不安を抱えながら、鈴菜が駆け込んだ道を目指す。
後ろから「危ない!」と呼び止める声が聞こえたが、振り返る余裕などない。
抱えた荷物を胸に、ただひたすら走る。
「スズ姉、ごめん……!」
約束を破る後ろめたさを押し殺し、彼女は鈴菜の元へと向かった。
⸻
「くっ……!」
鈴菜は銃弾を撃ち続けながら、呪術師の動きを観察する。
「やっぱり、あと一押し必要か……」
呪術師はそれぞれに強さが異なる。
今回の相手も一人で押し切れる相手ではあるが、決定打となる攻撃が必要だ。
鈴菜は小型銃を地面に置き、右手を解放する。
そして、左手に新たな魔法の準備を開始する。
「これで終わりだ!」
両手を呪術師に向け、足元から生まれた風と光が手のひらに集まっていく。
次の瞬間、ビームのような強力な魔法が呪術師を直撃した。
「……っ!」
呪術師の奇声は、最後には苦しげな悲鳴に変わり、消えていった――。
⸻
鈴菜が呪術師を倒したその時、背後から小さな声がした。
「スズ姉……」
振り返ると、そこには不安そうな顔をしたアヤメの姿があった――。