No.46 同じ現場を越えて
それから、数ヶ月が過ぎた。
鈴菜は魔法を教えながら実戦に立ち、
別の時間には颯馬が玲音に情報屋の仕事を任せていた。
受ける案件は、どれも小規模なものばかりだった。
同じような現場を、いくつもこなす。
大きな失敗も、目立った成果もない。
ただ、仕事としては確実に片付いていった。
鈴菜は前に立ち、呪術師を制圧する。
玲音は一歩引いた位置から魔力の流れを読み、必要な補助だけを入れた。
いつの間にか、合図も、細かな作戦も必要なくなっていた。
それでも動きは、自然と噛み合っていく。
言葉は増えない。
互いの事情に踏み込むこともない。
距離はまだある。
だが、仕事としての信頼だけは、静かに積み重なっていた。
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館内へ戻る途中、鈴菜は軽く肩を回した。
「今日はこれで終わり!」
「はい。今のところ、追加はなさそうです」
玲音の返事は簡潔だった。
感情の起伏はなく、淡々としている。
鈴菜はそれ以上何も言わず、歩調だけを合わせた。
沈黙が続くが、気まずさはなかった。
「……もう、だいぶ慣れたよね」
前を向いたまま、鈴菜が言う。
「現場の話」
「そうですね。
まだ判断が遅れる場面はありますが」
「そこは、そのうち早くなる」
即答だった。
「今の感じなら、問題ないよ」
そう言って、鈴菜はちらりと横を見る。
「だから、そんなに気にしなくていい。レノ君」
名前を呼ばれ、玲音は一瞬だけ視線を上げた。
「……ありがとうございます」
短く答え、また前を見る。
そのとき、鈴菜の通信端末が短く震えた。
画面に目を落とし、眉をひそめる。
「追加ですか」
「うん。小さめの個体だけど、人通りが少ない場所」
鈴菜は足を止め、玲音を振り返る。
「これで今日最後にしたいんだけど。どうする?」
「……行きます」
即答だった。
鈴菜はそれ以上何も言わず、方向を変える。
玲音は自然に、その後ろについた。
「じゃあ、私が前。いつも通りで」
「了解です」
現場が近づくにつれ、空気が変わる。
魔力の濁りが、皮膚にまとわりつく。
玲音は一歩後ろに下がり、視線を巡らせた。
鈴菜は迷いなく、戦場へ一歩踏み入れる。
「――来る」
その一言と同時に、
戦闘が始まった。




