NO.30 静寂を破るもの
気づけば、梨亜は手帳の印を無意識に指でなぞっていた。
ハッとして手帳を閉じ、帰り支度のために椅子から立ち上がる。
その瞬間——。
ドンッ!!
爆ぜるような衝撃と轟音が校舎を揺らし、思わず体が跳ね上がる。
本に触れていた右手が止まり、目を見開いたまま周囲を見渡す。
「な、何……?」
廊下のざわめきが一気に大きくなり、図書室の外へ人が走り出していく。
梨亜も胸の鼓動を抑えきれず、思わず廊下へ駆け出した。
(何が起きてるの……!?)
衝撃と轟音に跳ね上がり、思わず席を立った。
開いていた本を押さえたまま固まり、耳を澄ます。
廊下が騒がしい。
人の足音と叫びが一気に近づき、図書室から生徒たちが雪崩のように走り出ていく。
「見ろよ、あれ!」「やばいって!」
何かが起きた——そう確信して、私も廊下へ駆け出した。
人の肩越しに、一瞬だけ下の景色が見える。
中庭に——
「……え?」
呪術師がいた。
(なんで魔高に……)
声が喉で止まり、周囲が騒ぐ中で、彼女だけが立ち尽くしていた。
一方その頃、放課後の校長室。
三澤校長と向かい合っていた鈴菜は、突如響いた轟音に顔を上げた。
机が震え、窓が鳴る。
二人は同時に立ち上がり、校長室を飛び出す。
廊下では、まだ学校に残っていた生徒の間で、すでに動揺が広がっていた。
「今のは——」
「呪術師です。中庭にいます」
三澤校長の一言を引き継ぐように遮って、鈴菜がそう答える。
水色に光る瞳を三澤校長へ向け、続ける。
「行きますか」
「——足止めを頼みたい」
鈴菜は即座に頷き、小型銃を準備し、
風紀委員の腕章をつける。
「任せてください」
そう一言告げ、鈴菜は駆け出した。
その背中をしばらく無言で見つめる。
彼女を見送った後、三澤校長はすぐに生徒たちへ指示を飛ばした。
「——みんな避難するんだ!こっちへ!」




