NO.3 「魔法と魔術」
人類が進歩を投げ打ってまで見つけ出した「魔法」――それは新たな文明そのものだった。
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最先端技術を諦めた世界では、誰もが「魔術」を使える時代が訪れていた。魔術は一定の訓練を経ることで誰でも使用可能であり、「エネルギー弾を放つ」という明確なイメージを助ける媒体――主に銃や本――を通じて発動される。
この便利な力を人々は「魔術」と呼んだ。
しかし「魔法」は異なる。魔法は限られた者だけが後天的に習得できる特別な力であり、その使い手を「魔法師」と称する。
表向きには同じ「エネルギー弾」を扱う力であるが、魔術と魔法の間には明確な違いが存在する。魔術は媒体を通じて安定して発動できる一方、魔法は圧倒的な自由度と力を持つが、使うたびに「代償」が伴うのだ。
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だが、こうした違いを理解しない者も多い。
魔術師たちは魔法師に対して劣等感と嫉妬心を抱き、「魔法師が自分たちより優れている」と一方的に憎む風潮が広がっていた。
そのため、魔法師は自らの正体を隠し、一般人として生きることを余儀なくされている。
スズナは校長室のソファにもたれながら、そんな魔術と魔法の関係についてぼんやりと考えていた。
――もし、魔術師と魔法師が共存できる社会になれば、何かが変わるのだろうか……。
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校長室にはスズナの妹、アヤメと校長が談笑する声が響いていた。普段は明るく饒舌な校長だが、その人物像に関してスズナは疑問を抱くことがある。
「そうだ、スズナちゃん!」
突然、校長がスズナに声をかけた。
「頼まれていた物を持ってきていたんだった。はい、どうぞ。」
校長は机の上から紙束を手渡す。
(……いまさら? もう三十分も経ってるんだけど。)
スズナはそう思いながら、礼儀正しく紙束を受け取る。
「ありがとうございます。」
スズナの手に渡されたその物は――
――スーパーのチラシだった。
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スズナは思わず表情を曇らせたが、校長は満足そうに微笑んでいる。
「これ、今日のお買い得品だよ。見ておくといい。」
そう言って胸を張る校長を前に、スズナは返答に困った。
(……この人、本当にただのボケなのか、ただふざけているだけなのか……。)
校長室は相変わらずの和やかな空気に包まれている――いや、校長が何を考えているかは分からないけれども。




