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NO.21 運命の交差点

鈴菜は魔導大図書館の中庭に入る。

ベンチに腰かけている少年へと足を運ぶ。


鈴菜が近寄る気配を察知し、玲音が手元の本から顔を上げる。

それと同時に鈴菜が声をかける。

「玲音くん」

「スズナ先輩!」


玲音は鈴菜の顔を見上げ、にこやかにそう言った。


鈴菜は彼の隣に腰を下ろす。

玲音はそばに置いてあったカバンから手帳を取り出し、

「さっそく任務の結果報告をしますね」と口を開いた。


鈴菜は頷き、続きを促す。

「先輩に話しかけてきた人、この人で合ってますか?」

玲音はメモ帳の後ろに挟んでいた写真を見せた。


鈴菜は顔色一つ変えることなく、昨日も見た顔を思い出し答える。

「うん、合ってる」


鈴菜の肯定の言葉を聞き、玲音はその写真をしまった。


「あの方は魔術専門高校の一年生。先輩と同級生ですね。

そして彼女の名前は――神坂かみさか 梨亜りあ

この名前、聞き覚えはありませんか?」

玲音はそう言って、鈴菜の顔を見る。


鈴菜は首を横に振って応える。

それを見た玲音は、予想通りといった様子で続ける。


「彼女は『神坂家』と呼ばれる、名家の血筋の方なんです」

「……名家?」

鈴菜が眉をひそめる。


「どんな名家かというと、

『魔術』の力がとても優れていて、優秀な人材で溢れかえっている家系なんです。

魔術師の世界では神坂の名をよく聞くんです!」

玲音が鈴菜に身を乗り出して、今日一番の笑顔でそう言う。


「そ、そうなんだ……」

鈴菜は珍しく気圧された様子で、少し困った様子で驚いた顔をする。

玲音がハッとし、目を逸らして姿勢を戻す。


鈴菜ものけぞっていた姿勢を戻し、クスッと笑って言う。

「レノ君は本当に魔術師オタクだね」


今度は玲音が目を丸くし、数秒経った後、顔を背ける。

鈴菜がニヤリと笑い、玲音の耳をつつく。

「耳が赤いぞ~」


玲音は肩をビクッとさせ、顔だけ鈴菜へ振り向き、呟くように言う。

「もう、からかわないでください」


鈴菜はふうと息をつき、柔らかい表情になって平然とした様子で言う。

「オタクなのは恥ずかしくないって言ってるのに。

『好き』を貫く誇り高き人、でしょ。あなたは」


玲音は少し時間を空けて頷く。


鈴菜は彼の手帳をいつの間にかパクり、読み上げる。

「彼女は神坂家の四女で、四姉妹全員が魔高に通っていた」

「あ、ちょ、スズナ先輩!」


玲音が慌てて手帳を取り返そうとする。

鈴菜はそれに合わせ、彼女自身の魔法を使い、

氷で出来た魔方陣のようなものを壁として、彼との境界線を引いた。


「初代当主は非常に力のある魔術師、かつ魔法師で、

誰よりも強く、人を導くカリスマ性もあった。

その能力やカリスマ性は子へ孫へと受け継がれ、

今の神坂家当主にまで続いている」

鈴菜は声に出して読みながら、

手帳から水色の両目を覗かせ、目で玲音に訴えかける。

それを見た玲音は諦めた様子でため息をつく。


「ただ、今の神坂家は悪い噂も絶えず、

権力を振りかざしているだけという悪評や、

能力に伸び悩む子孫たちがいると言われている……」

読み終えた鈴菜は、手帳を玲音へ差し出す。


「それほど大きな家系が、ここまで変わってしまうなんてね」

鈴菜の感想を聞きながら、玲音が手帳を受け取る。

玲音は手帳をしまうと、恨めしそうに鈴菜に言う。


「……なにも魔法まで使わなくても。

しかもドクターストップがかかってるのに」

「まあまあ。ちょっと使用制限があるだけだよ」

鈴菜がしっしと手を振り、氷の壁がさらさらと薄れていき、目から水色の光が消えていく。


玲音が続きの小言を言い出す前に、鈴菜が話題を変える。

「無事、依頼完了したし、『報酬』を買いに行きますか」


それを聞いた玲音の表情がわかりやすくコロッと変わる。

「はい、行きましょう!」



――そして、

有名ブランドの店から庶民的な価格の店まで並ぶ商店街にやって来た。

平日でも人で賑わうこの場所で、玲音は帽子店の前で真剣に品定めしていた。


「先輩、これはどうでしょう?」

いつも以上にウキウキしている玲音が帽子を試着し、鈴菜に話しかける。

鈴菜はジメッとした様子で応える。

「私に聞くのが間違ってる。私ファッションに疎いんだってば」


玲音は変わらない表情で

「はい、それは前も聞きました。

スズナ先輩と一緒にお店に来るのが良いんです」

鈴菜は聞き間違いかと思って、目を見開いて固まる。


「それってどういう……」

「でも、先輩的にはどれがいいと思いますか?」

脳の理解が追いついていない鈴菜に、玲音は追い打ちをかける。


「あ、え、今被ってる帽子かな」

「じゃあ、これにしますね!」

放心状態の鈴菜を置いて、玲音がそう応える。


「あ。私が買うんだった」

そう言って鈴菜が会計をしに向かった。



「スズナ先輩、ありがとうございました!」

「そりゃあ、依頼の報酬だからね」

玲音は嬉しそうにそう言い、買ったばかりの帽子を被って歩いている。


いつも通り、二人で軽口を交わしながら歩いていると、

見覚えのある顔が、前方から向かってきていた。


相手は驚いた表情をする。鈴菜は冷静に呟く。

「あなたは……神坂梨亜さん」


そう、そこにいたのは、あの女子生徒だった。

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