NO.20 再会
―次の日
鈴菜は魔高に到着し、廊下にあるロッカーに荷物をしまう。
ロッカーの扉を閉じた彼女は渋い顔をしていた。
ロッカーの前に立つ彼女の背後を
食堂へ向かって歩き、談笑する生徒たちが通り過ぎていく。
彼女はしばらく溜めていた息を盛大に吐く。
「……はあー」
太陽も高く昇る頃、
彼女は五限目だけの授業を受けに来ていた。
「まあ、見回りでもして暇つぶすかー」
後ろを振り返ると、会話に夢中な生徒たちの姿が見える。
どの生徒も私服で自由気ままに行き来している。
鈴菜は視線を外し、いつものように『風紀委員』の腕章をつける。
一歩踏み出そうとしたその瞬間、足が止まった。
彼女の視界に、『あの女子生徒』の姿が映る。
「あら、また会うなんて。世の中狭いものね」
例の女子生徒は、軽く笑ってそう言う。
鈴菜は呆れた様子で返す。
「あー本当に。狭いのは世の中じゃなくて、あなたの行動範囲なのでは?」
そう言うと、女子生徒は笑顔を少し引きつらせる。
鈴菜は相手が応える前に続けて口を開く。
「それで、単刀直入に聞きますが、何の用でしょうか」
鈴菜は目を伏せ、鋭くなった目つきでそう問う。
「別に。意味なんてないわ」
相手の淡々とした回答に、一瞬言葉が詰まる。
そのままお互い無言が続く。
鈴菜が沈黙を破る。
「……私に話しかけてきたのは、本当は、何か聞きたいことがあるから?」
空気が変わった。
女子生徒は少し顔を曇らせる。
彼女は口を固く紡ぎ、沈黙し続ける。
口を開くか迷っている様子で、鈴菜を見続ける。
(図星か……)
鈴菜は心の中でそう呟く。
「その無言、肯定と受け取っておきます」
鈴菜は体の向きを変え、歩き出す。
「あなたの気持ち、分からないでもないですが……。
私に聞くのはナンセンスですね」
「なっ……」
驚いた女子生徒は咄嗟に声が出る。
鈴菜はそれを遮るように続ける。
「私には、関わらない方が身のためです」
去り際にそう言い、彼女の横を通り過ぎる。
「……考えておくわ」
背後から小さく声が聞こえた気がしたが、鈴菜は一度も振り返ることなく歩き去った。
――
「スズナちゃん、いらっしゃい!」
校長室に入ると、三澤校長が顔を上げて歓迎する。
鈴菜は持ち物をソファの横に置き、ソファの定位置に腰を下ろす。
向かい側に少し遅れて三澤校長が座る。
彼女は三澤校長が持ってきていたスーパーのチラシをしれっとパクり、
そのチラシを熱心に見ている。
「あ、そうだ。レノ君から連絡があったよ。『調べ終えました』だって」
鈴菜は手元のチラシから顔を上げる。
「もうですか?依頼してからまだ二日しか経っていませんよ」
「うん、本当に彼はいつも早いね~。君のこととなると」
三澤校長はそう言い、鈴菜の様子を伺う。
彼女は、なぜじーっと見られているのか分からないと言いたげな顔をし、
「まあ、いつものことだし」と呟くように言った。
三澤校長はその様子を見て、変わらない笑顔で続ける。
「明日の午後一時に、魔導大図書館の中庭へ来てほしいって」
鈴菜は頷き、チラシに目を移す。
チラシに目を通す彼女は訝しげな顔をし、声を上げる。
「まだ五月なのにアイス?ちょっと時期間違えてない?」
三澤校長は長い足を組んで、そのまま正面の少女を眺める。
不意に、チラシで正面からは隠れていた顔が上がる。
「しかも、お月見ニンジン味……。時期バグってるよね」
三澤校長は微笑みを崩さないまま、独り言を続ける少女を見つつ、呟く。
「まだまだ道のりは長いみたいだよ、レノ君」




