NO.19 氷と結晶の共鳴
鈴菜は二人の安否を確認し、二人へ向かって声を張る。
「レノ君は攻撃を!アヤちゃんは下がって!」
彼女はそう言い終えると、小型銃で攻撃を再開し、左手に力を集中させ魔法の発動準備を始める。
菖蒲は玲音の合図で距離を取り、後退していく。
玲音はその淡い黄色の目で敵を視界に捉える。
『防御』に注いでいた魔法を徐々に弱め、左手を添えた状態で、右手を敵へ向ける。
防御壁になっていた魔法が散り散りになり、彼の周囲に細かい粒子になって集結する。
その粒子は複数の淡い黄色の円錐の形を作り出す。
あらゆる方向を指していた、鋭角に尖った先端が、彼の視界の先に照準を合わせる。
彼が照準を合わせたのを見た鈴菜が、瞬時に左手の力を強める。
彼女の後方に、不透明な水色の氷柱を模した魔法が現れる。
その数多の氷柱は切っ先を揃えて敵に向けている。
一瞬の瞬きをしたその目は、彼女の魔法と同じ色をしていた。
二人の魔法の光が瞬き、同時に行動を開始する。
鈴菜が駆け出す。
呪術師が鈴菜の方を向く。
玲音は自身の魔法を放つ。
その攻撃は大半が命中する。
陽動が成功し、呪術師は標的を変える。
鈴菜は敵の背後へと回り込み、用意した数多の氷柱を放つ。
魔法が飛んでいくのと同時に、瞬時に同じ数の氷柱を再形成する。
それを繰り返して放ち続ける。
空中を浮遊する呪術師が悲鳴を上げる。
呪術師は黒く濁った塊のような呪術を、敵対する鈴菜に放つが、
その最後の足掻きも菖蒲の支援魔法によって打ち落とされる。
それに伴い、ついにはその巨躯も地面に崩れ落ちた。
⸻
玲音は息を整えると同時に、そばを吹き抜けた風に帽子がさらわれる。
慌てて追いかけ、帽子を拾い、大事そうに抱える。
立ち止まった玲音に近づいてくる足音。
彼の視界の先には、菖蒲と合流した鈴菜が歩いて向かってきていた。
「戦闘終了ですね」
「はー。任務終了だね」
玲音は鈴菜に声をかけて、鈴菜は腰に小型銃をしまい、額の汗を拭う仕草をした。
鈴菜は手袋をはめている事に気づき、紋章がついた手袋を外す。
その横で菖蒲は紋章のついた髪飾りを外している。
三体の呪術師は無力化され、
後処理は魔導大図書館の職員たちに任せることとなった。
簡単な事情聴取を済ませ、三人は帰路につく。
「今日も疲れたけど、明日も学校なんだよね」
伸びをしながら鈴菜が呟くように言う。
玲音はその様子を見て、クスッと笑う。
「僕も学校がありますよ。休みたいですけど」
二人の掛け合いを菖蒲はにこやかな笑顔で眺め、元気よく声を上げる。
「でも明日は金曜日だから、もうひと頑張りだよ!」
鈴菜と玲音が同じ驚いた表情をして、お互いの顔を見る。
それぞれに表情を緩めて話す。
「うん、そうだね。レノ君早く寝るんだよ」
「スズナ先輩もしっかり休んで、明日の学校に備えてくださいね」
鈴菜は口をつぐみ、目を逸らす。
玲音は不自然なほど優しい笑顔で、声音を少し強める。
「先輩。学校にちゃんと行くんですよ?」
「……私は何も言ってないよ」
鈴菜はそう言い、気まずそうに目を避けた。
空気に耐えきれず折れた鈴菜は、やがてため息をつき、頷く。
「君も誰に似たんだか」
鈴菜は恨めしそうに玲音を見るが、彼はただ笑ってはぐらかした。
「冗談はおいといて、
では先輩、依頼の件は情報が集まり次第、三澤校長先生を通してお伝えします」
彼は気を取り直して、真剣な顔で鈴菜にそう告げる。
鈴菜が頷いたのを見ると、いつものにこやかな顔に変わり、
玲音は姉妹に手を振って、反対方向の帰路へと歩き出した。
二人は遠くなっていく背をしばらく見届け、どちらともなく口を開く。
「じゃあ、私たちも帰ろうか」
「うん!」
鈴菜と菖蒲は並んで歩き出し、彼女たちの住む魔高の寮へと帰っていった。




