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NO.15 魔法師の宿命と再会

鈴菜は中庭での出来事を菖蒲と三澤校長へ話していた。

菖蒲は心配そうに、三澤校長は平然と答える。


「今日のお昼にそんなことが……」

「さっそく巻き込まれたね」


鈴菜は呆れ気味で、校長室のソファの背もたれにもたれかかる。


「想定はしていましたが、今後どうなることやら」


今日の昼休み、女子生徒たちは鈴菜に告げた後、すぐに中庭を立ち去った。五限目の教室へ向かったのだろう。


「僕からも何か対処した方がいい?」


三澤校長は鈴菜に目を向け、そう言う。


「いえ、大丈夫です。今のところは自分でなんとかします」


「分かったよ。気をつけてねー」


(この気の抜けた話し方……)


「……その話し方、他の人の前ではしてませんよね?」


「鈴菜ちゃん、嫉妬してるのかい?」


三澤校長は変にニヤつきながら鈴菜を見る。

鈴菜はジト目になり、冷静に否定する。だが、隣に座っていた菖蒲が身を乗り出して反論したために、声が被る。


「いいえ、してませ……」

「スズ姉はそんなこと思いません!」


鈴菜は驚いて隣を見て、反射的に「アヤちゃん!?」と声をあげる。

菖蒲が三澤校長を睨みつける。三澤校長は冷や汗をかいて、乾いた笑いをした。


「もちろん冗談だよ……。菖蒲ちゃん、怖い」


鈴菜は菖蒲と三澤校長のいつもの会話を見て、笑みを浮かべる。

その笑みはやがて消え、鈴菜は思考の海に沈んでいく。


―昼休みに現れたあの女子生徒は、目立つ存在でリーダー格に見えた。

それでも、私は初めて見る顔だったし、彼女も私を魔法師としか知らない様子だった。


……まあ、今日は数少ない友人に会いに行くつもりだし、

対処法を相談してみるのもいいかもしれない。



同日の午後4時半。

今日は魔導大図書館に寄る予定があり、早めに学校を出た。

校長に別れの挨拶をし、姉妹で魔導大図書館に向かって歩き出す。

不意に菖蒲が鈴菜の服の裾を掴む。


「もしお注射するなら、その、がんばってね」


心配そうな顔で鈴菜を見上げる。

鈴菜は一瞬目を見開くも、すぐに柔らかい笑みで返す。


「大丈夫。注射は怖くないよ」


そう言われ、菖蒲は注射という単語に苦い顔をして、目を逸らす。

鈴菜は笑みを浮かべたまま、菖蒲を横目で見る。


「私もアヤちゃんと同じくらいの頃は、注射が嫌いだったなー」


「……スズ姉もそうだったんだね」


菖蒲はそう答えると、服の裾を掴むのをやめた。

そんな会話を続けるうち、ちょうど目的地に着いた。


魔導大図書館のゲートを抜けると、圧巻の景色が広がった。

ドーム状の高い天井まで届きそうな本棚が並ぶ広間。

その壮大さに、何度訪れても感嘆せずにはいられない。


受付を横目に見つつ奥の廊下へ向かう。

廊下の長さに少し迷いそうになるが、いつもの部屋にたどり着いた。


ドアを開け、「こんにちは」と声をかけると、

メガネをかけた白衣の女性が出迎えた。


「いらっしゃい。さあ座って」


ここは『医務室』。

学校の保健室に似た内装だが、規模は少し小さい。


「いつもの通り、アヤメちゃんは奥の部屋を使ってていいわよ」


「はーい、お借りしまーす!スズ姉、また後でね!」


鈴奈は手を振って見送る。

菖蒲が奥の部屋に入ったのを見届けると、先生が私に向き直った。


「それでは、検査をしましょうか」


検査はスムーズに終わり、異常なしとの結果。

「魔法を控え、魔術を使うようにしてね」と注意されたが、

まだ魔術を得意とするには至っていない自分を認めざるを得ない。


「無茶しちゃだめよ」と優しく諭され、

つい幼い頃のように「この人が母親なら」と思ってしまう。


私は『魔法性虚弱体質』という症状をもっており、

魔法を使うと疲労が激しく、体力の消耗が大きい。

そのため、定期的に検査を受ける必要があった。


「鈴菜ちゃん、また魔法を使ったんじゃない?

魔術も使えてる?」


「はい。

でも、他に手段がないときは魔法を使います。

迷惑や心配はかけるでしょうけど」


「ええ、その気持ちは分かっているつもりだけど、オススメはしないわ。

あなたの体が第一優先なんだからね」


先生の言葉に心が温かくなりつつ、話題が切り替わる。


「ところで、あなたの妹、素晴らしく良いセンスしてるわね!」


先生は魔導大図書館専用の制服デザイナーでもあり、

菖蒲のデザインが採用されることもあるほど信頼しているらしい。

奥の部屋ではよく菖蒲がその創作活動に励んでいるようだ。


「それはアヤちゃんに伝えてあげてください。喜びますので」


微笑ましく頬を緩めて鈴菜が答える。

医務室を後にして、廊下に出る。

歩き続けて廊下を抜け、再び広間へ戻る。


周囲を見渡すと、多くの人が行き交い、

携帯電話を使う姿もちらほら。


(私も携帯が使えれば楽なのに……)


機械音痴の自分を思い出し、思わず苦笑いし溜息が出る。

そんな時だった―


「こんにちは、先輩」


鈴菜の後ろから声がかけられる。

振り返ると、そこには見覚えのある青年が立っていた。

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