NO.12 居場所
「二人とも来てくれて助かりました!」
鈴菜はいつもの様子で二人をそれぞれ見る。
三澤校長が愉快そうに笑いながら、頭をかいて言う。
「いやー本当に、あの事件はどうなることかと思ったね」
「もうスズ姉ったら! あのとき、すごく心配してたんだよ!」
あの教室での騒動から数日が経った。
今日は、いつもどおり校長室で過ごしている。
ソファにもたれる鈴菜、その隣で微笑む菖蒲、そして向かいの席には三澤校長。
三澤校長と鈴菜の軽口が飛び交う中、菖蒲はどこか安心した気持ちで二人を見ていた。
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「アレ以降、授業に参加しにくくなったんだよね、いやはや参ったなー」
「鈴菜ちゃん。君、そもそも前から授業にあんまり参加してなかったでしょ」
鈴菜が顔を背ける様子に、菖蒲はくすくすと笑いをこらえる。
授業をサボっていたことが校長先生にもバレていたなんて、姉も意外と隙だらけだ。
「授業に参加しない理由? いやいや、決して魔術が苦手とかじゃないですから!」
「はあ、君のためにも言ってるんだよ?」
三澤校長と鈴菜のいつもの言い合いが始まる。
やがて、三澤校長が根負けし、話題を切り替える。
「そうだ、『風紀』の調子はどうだい? 委員長さん」
「委員長って呼んでからかうのやめてください……」
風紀委員長である鈴菜は、魔高唯一の魔法師としての責任を感じながらも、
どこか誇らしげな表情をしているように見えた。
「来年になって『彼』が入学してくれれば、風紀委員のメンバーが増えるんだけどね」
校長先生の言葉に、鈴菜が言葉を詰まらせ、咳き込む。
一方で、菖蒲は黙ったまま考え込んでいた。
――校長先生は、わたしにとって父のような存在だ。
実の父は、今はもうずっと帰ってきておらず、しばらく会っていない。
彼女にとって家族との関係は複雑だ。
それでも、ここでは姉がいて、校長先生がいる。
それだけで十分だと思っている。
(スズ姉……)
(またおうちに戻ることがあったら、どうなっちゃうのかな……)
そんな思いを胸に、菖蒲はそっと姉に視線を向けた。
その視線に気づいた鈴菜が、首を傾げて、優しく微笑む。
「ううん、なんでもない」
姉の笑顔に安心しながら、菖蒲は窓の外で咲き誇る桜を見つめた。
その桜は、まるで二人の未来を応援するかのように、鮮やかに揺れていた――。




