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秋風  作者: 皐月 悠
6/7

【6】


【6】


 女性店員さんの恋人は、眼鏡の店員のルカだった。

 その事実を知ったのは、2人のシフトが重なった時に瑠奈と来店した時の事だ。

 気がついたのは、瑠奈で、『雰囲気がそう』と小声で言われ、あらためて2人を見ると、そう見える。確かに、ルカは外見がクールだけど、私からは可愛い性格だとは思えるような要素は何もない。しいてあげるならば、Sな性格だと言えば言葉がきつすぎたかもしれない。強気な部分も感じ取る事ができたので、臆病の部分も納得する事ができないと感じた。

 納得できた事と言えば、どこかミステリアスな人物だから、悟ったようなあの言葉を言ったのだとしても、納得できる。

 「おかわりをお願いします」

 「かしこまりました」

 ルカは礼をすると、奥に行く。

 「・・・私にもできるかな?」

 後ろ姿を見送りながら、ふとそんな言葉が口を出た。

喫茶店で働く事など考えてみた事もない。接客業は、むしろ、求人をみかける度にさけてきた。全くの食わず嫌い、というわけではない。何度かは短期で経験してみた事がある。その結果、向かないと感じていたからだ。

 それが、最近は、チェーン店のようにたくさんのお客さんが来る場所でない職場であれば、接客もできるのかもしれないと考え方が少しだけ、変化してきている。

 「急に、どうしたの?」

 「前に、一人でこのお店に来た時、雑談していたのね。不安に感じている事があって。その時、変化を恐れるのではなく、想えているのなら大丈夫だと言われた事があって」

 「変化するために、挑戦してみようってこと?」

 「まだ、決定ではないけど」

 私は、苦笑を浮かべた。

 「挑戦してみるのも良いのかもしれないと思って。正直なところ、転職を考えている。今すぐと時間に余裕がないわけではない。けれど、2人のこれからの事を考えると、必要かなと思いつつ、いきなり収入ゼロにしてまで挑戦する勇気がなく・・・」

 「心配しなくていいのに」

 瑠奈はふと笑みを浮かべる。

 「少しの余裕ぐらいあるから。無鉄砲過ぎると困るけど、これから先だとまだまだ長いよ。その長い人生、私にだって何が起こるのかは分からない。ま、人の感情は生き物だから、ずっと同じ形のままってわけにはいかない。変化は激しくしてくだろうけど、それは、現状維持じゃないから起こるから」

 瑠奈は自分の紅茶を、一口飲む。

 「その変化を楽しんだ方が、楽しく過ごせそうじゃない?」

 「そう、だね」

 「私は、友里恵と一緒に歩いて行きたい」

 陶器がぶつかる音がして、温かい珈琲が目の前に置かれた。

 「ブレンド珈琲、お待たせ致しました」

 「ありがとう」

 一口飲むと優しい味が口の中に広がった。


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