【3】
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「友里恵、本当にこの歌手好きだね」
本棚の隅に並べているCDから、最近発売されていたCDをとって見ている。
「作品もだけど、人柄も好きだから」
「ふーん、あ、でもこの前ラジオ出演しているのを聴いよ、納得した」
「納得したの?」
「そう、納得した。いいなって」
そう言いながら、瑠奈はとって見ていたCDをかけた。
瑠奈は、そういうものだと受け入れてくれるところがある。そして、自分の興味のない事も、少しは触れてくれるところがある。知ろうとしてくれるのが、嬉しい。
「ありがとう」
好きだから、その人を知りたい。
知りたいから、付き合いたい。
私にとって、人と付き合いたい理由はシンプルだ。
これだけは絶対だと感じる事が少ない私が、これから先の人生の中でずっとこの気持ちだけは変わらないと断言できるのは、絵を描くという事の他には瑠奈への気持ちだと思う。
はい、と部屋着の一着を渡した。
「つまり、性格がタイプ」
「私の場合、そっちの方が大事」
「ふーん」
瑠奈が言っている事は、たぶん、真実だと思う。根拠はないが、雰囲気でそういう事が伝わる事も時にはある。
「それで、満点をとったのが、友里恵」
「残念な性格の私のどこを見て?」
「そういう、可愛いところ」
「それ、こた・・・」
答えになってないと続けようとした言葉は、途中でさえぎられた。いつもよりも、だいぶ強引で、まるで独占欲の塊のようだ。私の恋人なのだと、この場には居ない誰かに誇示をするような、奪うようなキスで、こたえればこたえるえるほどに激しくなる。息も次第に荒くなってきて、唇から離れた。
感触を確かめるように、首筋を瑠奈の手が撫であげる。それだけの事に身体が反応してしまう。ぽんぽんと頭を優しく撫でられる。
「十分に答えになっているでしょ。ついでに正直なところ、触りたくなるのを我慢してきたのよね。これからは、我慢しないから」
覚悟して、と小声で弱い耳元で囁かれた。
その声を聞いて、今日、瑠奈を部屋にいれたのは間違いだったかもしれないと思った。告白されて、付き合っている以上、そういう事にはなるだろうけど、まさか、今日なってしまうかもしれないとは考えていない。
自分でも顔が真っ赤になっているのが分かる。スキップでもしそうな上機嫌で、瑠奈は部屋着を持って、私の部屋に入ると襖を閉めた。
私も早めに部屋着に着替えた。瑠奈から洗濯物を回収すると、次の日に回す洗濯物を洗濯かごに、入れていく。部屋に戻ると、瑠奈がテレビをいれていた。
自分の日常の空間に、大切な人が居る。
今のこの時間がとても幸福だと感じるが、時々、不安になる事もある。この幸福な時間が長く続くのか?という不安だ。変化しやすい人の心を秋の空でたとえる事もあるくらいだ。自分達次第なのだと理解しているけど、時々、頭の片隅をかすめていく不安は完全に消えてくれる事がない。
隣に座ってテレビを見る。
「そんな心配そうな表情しなくても、急に襲うような事は、たぶん、しないから」
つい、そんな事を考えてしまっている間に、表情が曇っていたらしい。ふっと笑みを浮かべる。
「たぶん、なの? でも、私は、二人きりなら触れるのは我慢しない」
我慢しないというよりも、我慢できなくなってきていて、ダメな部分だなと思ってきていた。
「あ、宣言した」
「仕事の疲れが癒されるから」
「それは、こっちの台詞」
「お互いに、だね」
そう言って、お互いにくすぐったくて笑った。