決戦の刻 ②
「ねえ、異様な気配を感じない?」
リースは妙な寒気を感じていた。地下8階の造りなのか、それとも――
「いるな。……死ぬなよ、いや、死んだら頼むぞ」
リーダーにしては珍しい弱気であった。
ダークゾーンを抜け、淡い光を放つ岩壁の広い通路へと出た一同。微かではあるが、奥にぼんやりと人影が見えた。
「……お出ましか?」
「……ああ。何かは知らんが強者のオーラを感じるな」
通路は更に広くなり、戦闘を行うに適した広さであった。恐らく最初から手荒な歓迎をする気であったのだろう……。
次第に露わになるサメ頭の男。片手に刀を持ち、微動だにせず堂々と待ち構えていた。時折首に巻いたマフラーだけが揺れていた。
そして遂に相対する時!パーティに緊張感が迸る――――!!
「待ちかねたぞ、お前ら!!」
サメ頭の男が大声で歓迎の意思を見せた。
「まだ8階の筈だが、お前がバリテルを襲ったで良いのか?」
リーダーは剣を構え一触即発の構えを見せた。
「いやよ、9階まで来れないんじゃと思ってよ……我慢できなかったわ。約束通り禁呪の書は持ってきたみたいだな」
刀を雑に構える男。まるで隙だらけの構えだか……。
「狙いはコイツだろ?」
と禁呪の書を取り出すエル。
「ほう、素直に寄こすのか……?」
「…………ほらよ」
エルは禁呪の書を放り投げた……が、宙を舞った禁呪の書はいきなり激しく燃え上がり、消し炭と化した。
「それが答えか……」
男は迸る殺気を解き放ちエルを睨みつけた!!
「生かして帰す気は無さそうだな……。闘う理由が出来ちまった」
エルの目に光が宿る。
「しかしよ、9人で来るとは、ちと多過ぎねぇか?」
その言葉にリーダー以外後ろを向いた。
「きゃあ!」
「うわわ!」
岩壁の闇からクリスタとカズハが、ライオン頭の女に追われていた。
「お前ら!!」
ロードの声が荒くなる。
「へへ、ゴメン旦那。クリスタちゃんにバレちゃった……」
「…………」
努めて明るいカズハと、無言のクリスタ。
「そんじゃ、こっちも2人だし始めるか。アルザイン、騒がしい女共は任せたぞ」
サメ頭の男はライオン頭の女を手で追い払う。
「はいはい。暑苦しいオス共は任せるよ、オークス」
ライオン頭の女アルザインが、サメ頭の男オークスを手で追い払う。
「オークスにアルザインね……。しっかりと翠色の墓標にその名を刻んでやるよ」
しかしリーダーの挑発に、2人は顔色1つ変えなかった。
「カズハ!時間を稼げ!先に終わらせる」
ロードは引きつった笑いを見せた。仕方ないとは言えカズハに頼らざるを得ない状況だ。ロードは不安に押し潰されそうになりながらもカズハに全てを託した。
「旦那……分かったよ!死んだら許さないからね!」
カズハは、期待されているかのような嬉しさを感じ、笑顔で答えた。
「行くぞ!!」
全員が構えから解き放たれる!
オークス 1
アルザイン 1
リーダーが真っ先にオークスへ低い姿勢から斬り掛かる!
しかし、そこにオークスの姿は無い。
ギィィン……
鈍い音と共にリーダーの後ろを狙ったオークスの刀の筋道に、ロードの剣が割って入り受け止める。
「爆ぜろ!!」
エルから放たれた業炎が、オークスの周囲を包み込み、逃げ場の無い炎の壁が次第に迫り来る!
「ぬるい!」
オークスは天上へ張り付き、瞬時にその姿を消そうと飛ぶ!
「させねぇよ!」
グレイの槍がオークスを狙う!動線上に現れたグレイの槍を躱し、オークスは緩やかに地面に降り立った。
「行くよ!」
リースは加護の呪文を唱え、全員の防御力を上げた。
「ほぅ、あちらは中々やるじゃないか」
ライオン頭の女アルザインがカズハと対立していた。クリスタはカズハの後ろで呪文を唱え始めた。
アルザインはノーモーションで礫を飛ばした!
「おっと!」
カズハは刀で礫を落とす。
「クリスタちゃんには手を触れさせないよ!」
カズハは刀を構え直し、アルザインの脇腹を薙いだ。しかしアルザインは後方へ飛びカズハの刀を避ける。
「ふふ、可愛い子。食べちゃいたい♡」
その言葉にカズハは背筋が凍り付く。
「げげ、私そっちの趣味は無いから……」
「行きます……」
クリスタの障壁呪文。2人の身体を透明な障壁が取り囲む。
「小癪な娘だ!」
アルザインは腰から鞭を取り出しカズハを狙った!
カズハは鞭を切り落とそうと刀を振るう。……しかし、鞭は切れず刀と手に鞭が巻き付いてしまった!
「ほらよ!」
アルザインが鞭を引くと、カズハは前に引っ張られた!
カチリと鞭が持ち手から取れ、中からレイピアが姿を現した。
「あわわわわ!」
バランスを崩しカズハは身動きが取れない!
「死ね小娘!!」
アルザインのレイピアがカズハの死角から鋭く襲いかかる!!
「カズハちゃん!」
クリスタの悲鳴!しかし、カズハは笑顔だった。
シッっと光が過ったかと思うと、レイピアを持つアルザインの手の甲に矢が刺さっていた。ギリギリの所でアルザインはレイピアを落としてしまった……。
「ちっ!!」
アルザインが矢の飛んできた方向を睨む。
「……………………」
そこには凛と佇むカリンの姿があった!




