決戦の刻 ①
「奴等が来たようだな」
「今地下7階を彷徨いている。まだ焦るな」
ワーナーの部屋から水晶で7階の様子を探るサメ頭の男とライオン頭の女。
「我々は上層へ向かうと力が弱まる故、必ず下層にて迎え撃つのだぞ?」
ワーナーの言葉に「はい」とだけ返事をする2人。
水晶に映る戦士と君主の前には一つ目の悪魔が微笑んでいた――
――キンッ!
リーダーの剣が悪魔の腕に弾かれる。
「っつ!」
鈍いしびれがリーダーの手から全身に広がる。本気で斬ったリーダーは少し自信を失いそうになるも、気合いで復活を遂げる。
「お前と共闘するのは初めてだな!」
ロードがリーダーを見て少し笑いを浮かべた。
「そうだな!俺は城兵の採用試験に落ちたからな!」
リーダーは悪魔の爪を躱し体勢を立て直す。
「魔力適正テストで0点取ったのは、お前が最初で最後だろうな!」
ロードの切っ先が悪魔の背中を斬りつけた。
「呪文使えないやつお断りなら最初に言っといて欲しかったぜ!」
リーダーはよろけた悪魔の肩を一刀両断で叩っ切った!
「その腹いせで実技の時、俺をボコボコにしただろう!?」
ロードは血の吹き出る肩口から剣を突き刺し、心臓へ一刺しした。悪魔は白目を剥いて絶命し、地面へ倒れ込む。
「どこかの君主様と違って俺は戦士しかなれませんからね!」
リーダーは剣を振り血を拭うと鞘へ収めた。
「ねえ、あの2人って昔からの知り合いなの?」
後ろで出る幕の無いリース達は、2人の事を話していた。
「何か因縁だらけな感じだね……」
「ちっ、緊張感の無い感じだぜ……」
一同は地下8階へと降りていった……。
「……暗いな」
強力な照明呪文を3人係で唱えるも、腕を伸ばしたその先すら見えない程の闇が全員を出迎える。
「コットンの話しとギルドの地図によると、正面が例の事件のあった場所だな」
その言葉にロードは少し様子を覗きたい衝動に駆られるも、今は己のやる事を優先させた。
「よし、右から行くぞ」
リーダーを先頭に、ロード、グレイが後に続く。リース、エルが一歩引いて後を追う形だ。そしてフェリーとカリンが殿を勤めた。しかし、その後方にはまだ誰かが…………。
「クリスタちゃん。こっちこっち」
手招きするカズハの後ろをか弱い足取りで進むクリスタ。
クリスタは朝、机で目が覚め禁呪の書が無いことに気が付き、カズハが自分の側を離れようとしない事やロードの姿が見えない事から全てを察しカズハを問い詰めた。
始めはシラを切るカズハであったが、次第にボロが出てしまい、しまいには全てを話してしまった……。
(皆揃って、禁呪の書に関係があるの?そもそもあの書はどこにいったの!?)
詳しい経緯を知らないカズハと、突如禁呪の書を失ったクリスタ。
(ま、絶対に側を離れるなって言われてるから、ある意味仕方ないよね~♪)
理由は違えど、心の奥底で蠢く『何か』に抗えず後を追ける2人。それは正しく冒険者のソレであった。
「げ、何これ。見るからにヤバそうじゃん?」
カズハが先程死んだ悪魔の身体を足で小突いた。
人間が悪魔を超越する。果たしてそれは人間と呼べるのか……。同じ思考が2人の頭を過るが、結論は全く異なっていた。
(……神への冒涜では……)
(ふふ、旦那ったら格好良いんだから~)
そして2人も地下8階へと足を踏み入れた……。
命よりも好奇心が勝ったのだ――




