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―WizardRye― 〜灰だらけのシスターと酒まみれの冒険者〜  作者: しいたけ
棺の山のクリスタと堕ちた男
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プリーストふたり 裏

 リースが酒場へ向かった後、クリスタは寺院の鍵を閉め直した。


(合鍵で開けて入ってきたのね……)


 そして静かに部屋へ戻ると、服の中から本を取り出し、もう一度好奇心を掻き立て直した。


(平凡な私でも、これがあれば……)

 クリスタは食い入るように本を見続けた……。


 ページが進むに連れて、赤黒い文字は文章から、単語が切れ切れになり、後半は殴り書きのメモの様な感じで文字の配置も滅茶苦茶であった。


(これは本なのかしら……?)


 そして、最後の数ページは全くの白紙……。

 クリスタは最初のページに戻り、出来る限りの解読を始めた。夜はまだ長い。クリスタは黙々と机に向かい続けた。




 気が付けば真夜中。

 ある程度まとまったノートをペラペラとめくり、クリスタは目頭を押さえ眠い目を堪えた。


 どうやら『禁呪 リ・インカーネーション』は大きく分けて3つに分かれているようだ。


 1つは、パーティ全員を蘇生させ、傷も全て癒やす呪文。

 1つは、死亡してもその場で自動蘇生する呪文。

 1つは、…………死ぬ事が出来なくなる呪いの呪文。とだけ書かれていた。


 『死ねなくなる』とはどう言う事なのか?皆目見当もつかない。

 

 それに、肝心の詠唱部分や予備動作が書かれておらず、クリスタにはまともな効力を発揮できそうに無かった。


 クリスタはノートをまとめ終わった達成感からか次第に眠くなり、すこし考える素振りで机に突っ伏すと、そのまま寝息を立て寝てしまった……。




「私の部屋から妙な禍々しい魔力を感じるわ……」

「ああ、オイラにも分かるよ……」

「…………」


 寺院の前には先程ドンチャン騒ぎを終えた3人が居た。たまたま寺院の前を通った際に、ふと先程は感じられなかった違和感を感じたのだ。


「オイラ見てくるよ」

 フェリーは千鳥足ならぬ千鳥飛びで寺院の窓から中の様子を覗った。部屋の中ではクリスタが机に突っ伏して寝ているのが見える。その傍らには、恐らく違和感の原因と思われる本が開いていた……。


 フェリーが合図をすると、エルが解錠呪文で窓の鍵を開ける。静かに窓を開けたフェリーが中へ入り込むと素早い動きで本を閉――


「っっ!!」

 フェリーは思わず声を上げそうになった!

 本の表紙に書かれた顔がこちらを覗き込むようにフェリーと目が合ったのだ!!

 フェリーは何とか落ち着きを取り戻し、本を抱えて外へと戻った。


「不気味な本だよ……」

「何々?」


「「禁呪……リ・インカーネーション?」」


 ピンと来ないリースとフェリーに対し、エルは背筋が凍りつく思いに駆られた。


「おい、読むのは後だ。フェリー他に何か無かったか?」

 エルの表情に余裕が消える。


「もう一回見てくるよ」

「早くしろよ」

 フェリーは慌てて部屋の中へ忍び込むと、クリスタの周囲を観察した。


「ノートがある」

 突っ伏したクリスタの腕の下にノートが見えるが、取ればクリスタが起きてしまうだろう……。


 フェリーは小声で呪文を詠唱すると、レビデート(浮遊)の呪文でクリスタの身体を少し浮かせ、僅かな隙間からノートを引き抜いた!

 そして外へ出ると窓を閉め、エルの呪文で鍵をかけ3人はその場から立ち去った!




「ん?忘れ物か?」

 まだ酒場で1人飲んでいたリーダー。

 3人は神妙な面持ちで席へと着いた。


「何か有ったって顔だな?」

 エルは空いた皿を端へ寄せると、例の本をテーブルへ置いた。


「随分と悪趣味な本だな。何処で見つけた?」

 リーダーは本をペラペラとめくり眉をひそめた。


「寺院の子が持っていたわ。勝手に拝借してきたのよ」

 リースも同じように眉をひそめる。


「禁呪の書だぞ?あの子が何処で手に入れたかは知らないが、持ってるだけで捕まる代物だぜ?」

 エルはクリスタがまとめたノートをめくり、灰皿の上で静かに置くと、指先から小さな炎を出し火を付けた。


「今ならまだ『夢だったのか』で済む。コイツは俺のカンだが、この禁呪はクセがありそうだ」

 エルはページをめくる度に地獄への階段を降りる様な感覚に襲われた。数ページで耐えられなくなり本をテーブルへ戻す。


「…………適当な殴り書きに見せかけて、文字の配置とバランスで詠唱を記してあるわ」

「読むな!!」

 エルは思わず声を荒げ、リースの手から本を奪い取った!


「ど、どうしたの!?」

 リースは今までに見せたことの無い焦りのエルに驚いた。

「禁呪だぞ。絶対に手を出すなよ!」

 エルはリースの身を案じ釘を刺したが、リースからすればエルが何をそんなに怒っているのか理解しがたかった。


「わ、分かったわよ……」


「コイツは明日デアスに話を付けて処分する……」

 エルは本を抱えたまま外へ出て行ってしまった……。


「何あれ?」

 リースは灰皿の灰に向かい呪文を唱えた。

 灰から戻すのはお手の物だ。元に戻ったノートをめくり、地獄への階段を1つ降りる。


「ん?いいのかそれ……」


 しかし、リーダーの言葉はリースへは届かない。リースはまじまじと食い入る様にノートを見た。




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