プリーストふたり 表
基本的にいつもの4人はお気楽極楽ノー天気です
「……すみません。お待たせしました」
クリスタの面持ちは固く、決して誰かを迎え入れる様な爽やかな笑顔では無かった。
「急に悪かったわね。2~3日したら学園に戻るからさ。その間は宿屋に泊まるから、気にしなくていいわ」
リースは思っていた構想と違う展開に少し戸惑っていた。
クリスタは無言で軽く頷く。
蘇生用の祭壇はとても綺麗に掃除されており、床も机も壁も普段の手入れが十分行き届いているように感じた。
「綺麗に使ってくれているのね。嬉しいわ」
リースはヒゲ面のムークに滅茶苦茶荒らされる事を覚悟していたが、若き少女が丁寧に扱ってくれていることに感謝した。
「いえ、そんな……。これも神の御心のままに……」
リースは驚いた。この街に『神』の名を出し、あまつさえ信仰心に厚い少女が居たことに……。
「表の棺は、もしかして灰?」
「いえ、私が来る前に置かれた物です。やっと半分まで減らせました」
リースはクリスタから今までの経緯を聞いた。
「そうだったの。いきなり辛い仕事でゴメンナサイね。本当なら城から代理の人が来るはず何だけど……」
「いえ、ロードさんにも手伝って貰ってますから……」
(ロード?聞いたことの無い名前ね……)
「そう。上手くいっているなら何よりだわ。他に困っている事は無いかしら?」
「……………………いえ」
「ふふ、良かったわ。それじゃあ私は酒場を覗いてくるわね。あ、そうそうお土産そこに置いとくね」
リースは寺院の扉を慣れた手つきで明け、雨の街へと消えていった……。
(この本の事、言えなかった……)
クリスタは腰の本に手を当て、罪悪感や背徳感、その裏返しにある好奇心に心を支配されそうになっていた……。
「へーい!やってる!?」
バーン!と開かれた酒場の扉。その場に居たいつもの輩が目を丸くしてこちらを見た。
「あ!リースだ!」
「帰ってきてたのか!?」
「おうおう!こっち来て飲め!」
見慣れた顔がそこにはあった。
「ちょっと!城の代理が来てないとか聞いてないんだけど!!」
酒を片手に開口一番リースは激怒した。
「いやな、俺が城に掛け合った時には、直ぐ来るって言ってたんだが……」
リーダーがすまなさそうな顔をした。
「だからあそこは嫌いなのよ!おかけで彼女に悪いことしちゃったじゃないの!」
久しぶりの酒場の酒は、すぐに胃に馴染んでは身体を温めてくれた。
「すまん、すまん」
リーダーは謝ることしか出来なかった。
「まあ、いいわ。はい、お土産」
リースはテーブルの上に、手のひらサイズの小さな宝箱を2つ置いた。
「おいおい、またかよ……」
エルとフェリーは苦笑いをする。
「うちのオタク共の最高傑作よ!私も手伝ったわ!」
リースはスンと鼻を鳴らした。
「おいおい、アイツら完全に殺す気で作ってるから、そろそろ本気で危ないぞ俺達……」
宝箱を手に取りまじまじと眺め、机に戻す。
フェリーは鍵穴を覗き様子を見ていた。
「いつまで居るんだ?」
リーダーの声にリースは正面を向いた。
「明後日までかな?明日は寺院の手伝いをするつもりよ。あんなに棺が転がってたら気味が悪いじゃない」
「あれからは蘇生代取れないぞ?」
「後でまとめて城に請求するわ」
リースは実に逞しかった……。
「う~ん……」
フェリーの唸り声に、リースはニヤリと微笑む。
「どう?……って既に1つ開いてるじゃないの!?」
「え? こっちは『女神の吐息』と『悪魔の瞳』のダブルトラップで最初驚いたけど、罠の仕掛け部分が判りやすかったから直ぐ開いたよ」
フェリーはもう一つの宝箱をいじりながら答えた。
その側には使い慣れた魔法の仕事道具が並んでいる。
「ダメだ、エル交代!」
諦めたようにエルに宝箱を渡すフェリー。
受け取ったエルは手に魔力を込め、宝箱に意識を集中させた。微弱な魔力を宝箱に流し、その反応の仕方で罠の識別を行う方法だ。
「駄目だな。コイツから魔を感じない。プロテクトがかかっているか、魔力を要しない罠だな」
「むむむ……」
2人が悩む姿に、ちょっとした優越感を感じるリース。顔が嬉しそうだ。
マスタークラス3人の英知が注ぎ込まれた宝箱は、もう学園の先生達では手に負えない程の物になっており、シンプルな見た目からは想像出来ないほど凶悪な仕様になっていた。
「まあ、いいや。持って帰って調べてみるよ」
「私が帰るまでに宜しくね♪」
その日、酒場は久しぶりの盛り上がりを見せた……。




