地下迷宮のガンマン ④
ロードの槍がドラゴンの頬を容易く引き裂いた!
「グエェェェェェ!!」
爪で反撃を繰り出すも、ロードの姿を正確に捕らえることが出来ず、空振りしてしまう。
「何これ!?凄いことになってるよ!」
カズハは今までに無い位の刀の切れ味に興奮していた。
刀を軽く引くだけでジャイアントの四肢が斬れ、分断してしまうのだ!
「まさにデッドオアアライブ……」
エリカは座ったままマスケット銃の引き金を引き、スネークメイジの頭を吹き飛ばした!
その横ではクリスタが懸命にエリカの脚を治していた。
「こんな事ならもっと良い武器を持ってくれば良かったな!」
ロードの槍捌きでドラゴンの身体は傷だらけになり、血が流れ滴るも決定打に欠けていた。
「ガァァァア!!」
ドラゴンの抵抗は一掃激しくなり、爪は鋭さを増す!
一方、懸命に棍棒を振り回すジャイアント。しかし、壁以外に当たることは無く次々と仲間達が地に伏せっていく……。
「旦那!終わったよ~!」
カズハが最後のジャイアントを倒し振り向いた瞬間、槍の穂先を飛ばされ残った柄の部分でドラゴンの爪を抑えるロードの姿が目に入った!
「旦那!!」
「!! ロードさん!?」
「すまん、しくじった……」
棒きれ1つでドラゴンの爪を抑えきれる筈も無く、ロードの肩には爪が少し刺さりめり込んでいた……。
カズハは素早く駆け寄りロードに襲いかかるドラゴンの手を切り落とした!
「ギェェェアァァァ!!」
ドラゴンの悲鳴が木霊する。
「すまん、助かった……」
ロードは膝を着き傷付いた肩を触る。その手には血がべっとりと付いていた……。
「借りるぞ……」
ロードはカズハの刀を1つ手にした。
「旦那、逃げようよ!」
「そろそろ《加護》が切れる。ここで終わらせるぞ……」
ロードは素早く治癒呪文を詠唱すると肩の傷が見る見るうちに塞がる。
のたうち回るドラゴンのクビを狙い、ロードの一閃が光った!
ドラゴンのクビは胴体から離れ、土埃と轟音を立てて地面に崩れ落ちた……。
「ファンタスティック……」
その姿にエリカは呆然とし、クリスタは恐怖を覚えた。
そしてカズハは恍惚とした表情を浮かべていた……。
「すまない、今回は俺のせいで皆を危険な目に合わせてしまった」
無事地上へ戻るとロードはまず謝った。そこにはいつもの穏やかな表情のロードがいた。
「ワタシのせいデース……VERYソーリー……」
俯いたままのエリカ。
「ま、何はともあれ皆無事だったから良かったね!」
カズハはにこやかに笑った。
「ロードさん、お顔の治療を……」
クリスタはロードの腕を引き、寺院へと向かった。
寺院の前の柩の山は半分以下まで減っていた。
「クリスタにも大分無理をさせたな。すまない」
「いいえ、元々は私がお願いした事ですから……」
クリスタの暖かい治癒呪文がロードの顔を癒やしてゆく。
「エリカは脚は大丈夫か?」
「大丈夫デス。ありがとう……」
顔を赤らめ控えめに返事をした。
「ん?もしかしてエリカ、旦那の凄さに気付いちゃった?」
ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべ、カズハが冷やかしに入る。
「……とても強くて格好良かったデス……」
エリカはロードの目を見て答えた。
「……何か照れるな」
ロードは今まで浴びたことの無い注目のされ方に照れ笑いで応えるのが精一杯だった。
「ところで、旦那が使ったあの呪文は何?やたら補助が掛かったんだけど」
「……今から言うことは誰にも言うなよ」
ロードは口調を改め、真面目に語り出した。
「あれは禁呪の1つだ。俺が兵長だった時に覚えた物で、同時に呪文をいくつも詠唱が出来る」
「……旦那って本当に化け物よね」
「ただし、当然リスクもある…………!」
ロードは己の手を見つめた……。
「呪文を1つ重ねる毎に、体力を相当持って行かれる。あの時は5つ重ねたから、最大HPが5分の1も無かっただろう」
「一撃貰ったら終わりじゃ無い!?」
「ああ、後衛職ならまだしも前衛職が使う技じゃないな。あの時ドラゴンの爪がもう少し深かったら俺は死んでいた」
「暫くすれば最大HPは元に戻るが、時間がかかる。スマンが暫くは探索はお預けだな」
ロードは努めて明るく振る舞った。
「でも旦那が無事で良かったよ」
「デスね」
ロードの話を無言で聞きながら治療に当たるクリスタ。
彼の何が2人を引き付けるのか、クリスタには全く理解できなかった。
地上にいる間は穏やかだが、地下へと進むと悪魔にしか見えなかった……。人間とはここまで恐ろしく見えるのか?クリスタはロードの治癒に躊躇いを持ったが、今は己の役割を果たすことだけを考えた……。




