クリスタの苦悩 ②
「おい、リーダー。帰ってきてから様子が変だぜ?寺院で何があった」
開けたばかりの宝箱をクルクルと指で回し、酒をあおるエル。
「……なあ?お前らがダンジョンに潜る理由って何だ?」
リーダーは務めて真面目な面持ちで問い掛けた。
普段とはまた違った真面目さに、2人は顔を見合わせパチクリと瞬きをした。
「なんだなんだ急に?ダンジョンに潜るのは冒険者の常だろ?何を今更……」
「いやな、寺院の娘に同じ事聞かれてな。己の目的の為に魔物を殺すのはどうなんだ?ってよ」
その言葉に眉をひそめたエルは、手にしていた酒を一気に飲み干した。
「かーーっ!虫唾が走るぜ!!これだから聖職者は嫌なんだよ!アイツらだって、俺達冒険者を殺しに来てるだろう!?あそこはそういう場所なんだよ!なあ?フェリーよ!」
「まあ、オイラは彼女の言う事が判らないでもないけどね……」
「おいおい、どうした!?」
「だって元々は魔物達のねぐらにオイラ達が強盗しに行ってるんだ。魔物からしたらたまったもんじゃないし、逆に殺されても文句は言えないさ」
「そりゃあ……そうだけどよ」
「平和に探索できるなら、それが最高だね。って事なんじゃないの?」
「お前は良いのかよ、それで」
エルの表情が暗くなる……。
「まあ、所詮は綺麗事だね」
「お!」
エルの表情に輝きが戻った!
「何より平和なダンジョンはつまらないよ!」
「な!だよな!だよな!!」
2人は空のグラスで乾杯をし、厚い握手を交わした……。
「よし、2人でその娘に先輩から1つアドバイスでも
してやろうか!」
「よし!行こう!!」
2人はフラつきながら酒場を後にした……。
「……こういう時程アイツらが羨ましい……」
リーダーは静かに杯を傾けた。
陽気な酔っ払い達が寺院の前に着くと、窓に誰かが映り込むのが見えた。
「あれは……デアスか?」
「こっそり回り込もうよ」
2人は柩の影からこっそりとリースの部屋へと回り込んだ。
「2人とも部屋に居るね」
「聞こえるか?」
自然な流れでいつもの盗聴スタイルに入った2人……。
「……何のために……か。そんな事考えた事も無かったな」
「……そうですか?」
「ただ……あの忌々しいダンジョンが何故あるのかは知っている」
険しい顔で目を合わせる2人。それは2人は知らない事だった。
「ここから先は、風の噂だ。だが他言はするなよ。最悪首が跳ぶぞ」
(酷ぇ風もあったもんだぜ……)
エルは眉をひそめた。
「かつて大魔術師ワーナーと呼ばれた男がいた。その男はあらゆる呪文を使いこなし、ついには不老不死へと辿り着く。しかし、彼はその日を境に地下へ籠もるようになったと言う。やがて地下はダンジョンと化し、魔物が蔓延る様になった……と」
(にわかには信じがたいな……)
エルとフェリーは渋い顔をした。
「つまり、ダンジョンの魔物達はワーナーが操っていると?」
「風の噂ではな」
「ワーナーを止めれば魔物が増えることは無いのでしょうか?」
「それはワーナーに聞いてくれ」
「ワーナーは地下の何処に?」
「風の噂では地下10階らしい。転移呪文の失敗で地下10階へ行った冒険者がそれらしい部屋を見たそうだ」
「この街に地下10階へ行ける人は?」
「残念ながらまだ地下8階までだ」
「……そうですか」
少し考えたクリスタは、意を決した様に口を開いた。
「あの……!私を地下10階まで連れて行って頂けませんか!?」
「な、何を言うかと思えば……」
ロードは深くため息をついた。
「おいおい、面白そうな話だな。俺達も混ぜてくれよ!」
エルとフェリーは居ても経ってもいられずに、窓から顔を覗き込ませ顔を出した。




