2人のゴリラ
何故この2人は平然と魔物達を殺せるのだろうか?
クリスタは2人と自分の違いを探していた。
物干し竿と呼ばれる大きな刀を振り回すロード。叩っ切るように次々と魔物達を朱に染めていく。
やや短い刀を2つ華麗に操り、漆黒の戦闘服で敵を撹乱させ隙を突いて斬りかかるカズハ。
一方クリスタは、玄室の隅っこでただ震える事しか出来なかった。
「おお、神よ。また悪魔が増えました……」
しかしクリスタの祈りが届くことは永遠に無い。
「中々やるな!」
「旦那ほどではないかな~」
2人は実に楽しそうに魔物を殺していく。
「クリスタちゃん開けといて~」
とカズハが宝箱をクリスタの方へ蹴り飛ばした。
……おかしい。彼女は普段こんな人だっただろうか?
いや、寧ろ今の彼女が本当の姿ではないのだろうか?
殺伐としたダンジョンでクリスタの疑念が晴れることは無い。
覚え立ての『鑑定』の呪文を使い、宝箱の罠を識別するクリスタ。
「……爆弾?」
どうやら開けない方が良さそうな罠だ。
次々とこちらへ蹴り届く宝箱。識別の終わった物は付箋で罠を書いておく。
どうやら魔力が尽きるのと同時に戦闘の方も終わった様だ。血を拭い刀を収める2人がこちらへ歩み寄る。
その後ろには例の如く屍の山。その時、クリスタの脳裏に寺院の柩の山がリンクする。
「クリスタちゃんお待たせ~」
その顔はクリスタが知るいつものカズハだった。
「流石にこのやり方はここらが限界だな。2~3被弾したぞ」
ロードは相変わらず返り血に塗れている。
「じゃあ旦那、筋肉解錠宜しくね♪」
「……否定できないのが辛いところだな」
ロードは罠の種類毎に分けられた宝箱から、『毒矢』と『石礫』の箱を前回と同じように開け始めた。
「……うわあ、本当に気合いで開けてるよ。旦那本当に人間?」
毒矢と石礫を生身で見切る動体視力に、カズハは少し引いていた……。
「終わったぞ」
宝箱の中身をクリスタの隣りに置き、次の解錠へと入る。
「ま、待って旦那!それ爆弾だよ?流石にそれは無理じゃない?」
「ん?ああ、大丈夫だ。開けるのは俺じゃない」
ロードは宝箱を2つ両脇に抱え、通路の奥へと消えた。しかし、すぐに戻ってきた。
「オーケー。後は開錠待ちだ」
と、ロードが答えた瞬間、通路の奥から爆発音が聞こえてきた。
「早速終わったぞ」
ロードは再び通路の奥へと向かう。カズハも静かに後を着いていった。
そこには、蓋の開いた宝箱と吹き飛んだコボルトナイトの姿が有った。
「旦那……もしかして」
「ああ。コイツら光り物に目がないからな。上に魔物の死体を乗せといて、それを動かそうとすると引っかかって蓋が開く寸法さ」
「……旦那ってクレイジー?」
カズハは少し鳥肌が立っていた。
「ココでは何でもアリなのさ」
ロードは宝箱の爆風対策の二重底を外し、中に安置されたお宝を手に取り、クリスタの下へと戻る。
「……クリスタちゃんゴメン。やっぱりクリスタちゃんには荷が重いかも……」
その呟きも、ダンジョンの闇へと吸い込まれていく……。
地上へと戻った3人。お宝をボッタ商店へと持って行く。ボッタ商店の店主は、血塗れのロードに少し驚くが務めて冷静に挨拶をした。
「これだけ貰ってもいいか?」
ロードは表面が少しくすんだ一振りの剣を取る。
「ええ。どうぞお持ち下さい」
クリスタは1つ返事で承諾した。
残りのアイテムを全て売り払い、手にしたお金に愕然とするクリスタ。
「4……4800G……?」
「地下5階は冒険者の半数すら到達できない領域だ。当然ドロップアイテムも高く売買される。この剣を入れたら6000って所か」
しかし、クリスタの愕然とした部分はそこではない……。
(アレだけの魔物達を殺して……つまりあの子達の命の値段はこれだけと言う事なのでしょうか?神よ……)
(あ、これクリスタちゃん変なこと考えてる顔だ……)
カズハは内容こそ判らないが、長年の付き合いからクリスタが何かを考えていることは察せた。
「じゃ、旦那。今日も家でシャワー浴びてく?」
「あ、ああ。すまない世話になる」
「……いつの間にかそういう仲になったのですね」
「旦那ったら昨日も自慢の刀で穴を開けちゃってさ♡」
「お、おい!変なことを言うな!」
カズハの冗談に多少気が紛れたが、魔物を殺して生計を立てる冒険者のやり方に疑問を持ち始めたクリスタであった……。




