女侍カズハ
クリスタが目を覚ますと、そこは寺院のベッドの上だった。
「あ、起きた。大丈夫?痛いところ無い?」
緩いポニーテールの茶髪をなびかせながら、こちらへ歩み寄る1人の女性。頭のネコ耳が可愛らしいフェルパーの女性だ。
「…………カズハちゃん……」
カズハと呼ばれたその女性。クリスタより2、3歳年上の昔からの知り合いだ。寺院で働いている事は伝えてはあるが、何故彼女がここに?
クリスタは目の前の状況を整理しきれずにいた。
「血みどろのオッサンがクリスタちゃんをお姫様抱っこしてたからびっくりしたよ!何か変なことされてない?」
クリスタは地下3階での出来事を思い出す……。
「ううん、大丈夫……。ちょっとダンションに入っただけ……」
「え!?クリスタちゃんがダンションに!?大丈夫!?オークに卑猥事されてない!?」
カズハはクリスタの身体を触り無事を確かめ始めた。
「だ、大丈夫だって!あの人は護衛の人なの!」
「ほんとかなぁ? 護衛料は?」
「……1000……G」
「地下何階?」
「……3階です」
「1000G払えたの?」
「……………………」
「……やっぱり身体で払ったの!?」
「……ううん、違うの」
「私が無理にお願いしてLv上げをお願いしたの……」
クリスタは幾つかの呪文が使えるようになっている事に気が付く。心なしか力や体力も上がっているみたいだ。いつもより身体が軽い。
クリスタから詳しい事情を聞くカズハ。話しが進むに連れて、カズハの顔が渋くなっていった……。
「モンスターの群れに素手で挑んで、宝箱の罠も気合いで何とかした……? あのオッサンゴリラか何か?」
「……悪魔の様な強さでした」
「ふ~ん……。ま、クリスタちゃんは少し休んでてよ。私少し出かけてくるね」
カズハは小さな身体をひょいと捻ると、足早に寺院を後にした。
いつもの酒場にいつものメンバーが3人……
「おいリーダー?あれ……」とエル。
「うわぁ……随分と派手にやったなぁ……」
窓の外に、血まみれの男が歩いていた。
「アイツ警備兵長をクビになってから荒れてやがるぜ?リーダー何とかならねぇのかよ」
「周囲がどうこう言ってもなぁ……」
「アレは誰?」
フェリーが指差した先に、ポニーテールを揺らしながら走る女がいた。
「おい!あの女、デアスに話し掛けたぞ!?」
「勇気あるなぁ」
「ああ!一緒に何処かへ行くぞ!」
3人は窓ガラスに張り付き様子を覗きこんだ。
「行っちまうぞ、どうする?」
「リーダー勘定は任せた!」
エルとフェリーは一目散に後を追いかけた。
「家に入ったぞ。あの女の家か?」
「事件のニオイがするねぇ♪」
2人は壁に耳を押し当て中の様子を覗う……。
「サッパリした? おお、何だ綺麗になってよく見たら旦那結構いい男だねぇ」
「……いきなり世話になってすまない。宿も入るなり追い出されてな」
「そりゃあ血まみれじゃねぇ……?」
2人の会話を盗み聞きし、ニヤリと笑い合う2人。
「クリスタちゃんに聞いたよ。色々有ったんだってね」
「気まぐれで寺院を訪ねたら面倒事に巻き込まれただけさ」
「にゃはは、でも懲りずにまた行ってあげてよ。旦那悪い人じゃなさそうだしさ。私もいつでも一緒というわけにいかないしね……」
「俺は高いぞ?」
「じゃあ、こっちで支払うのは……?」
カズハはおもむろに上着のボタンを外し始めた。
「待て、ちょっと借りるぞ……」
ロードは机にかけてあったカズハの刀を取ると鞘を抜き、いきなり壁に刀を突き刺した!
ドスッ!
「……!!」
エルの顔の脇に突然現れた刀。
2人は無言で頷き合図を送ると、そろりとその場を離れ、酒場へと戻っていった。
「どしたの旦那?」
「すまない、ネズミが二匹いた。良い刀だな」
「どうも。それより……」
と外したボタンからそこそこ豊満な谷間をチラつかせるカズハ。
「すまんがしまってくれ。興味ない」
ロードは真顔でバッサリと斬り捨てた。
「えっ!? 旦那って♂♡なの!?」
「ち、ちがうわ!」
「お、何か一瞬素が出たね~」
「…………」
「じゃ、これで正式に依頼するよ」
とカズハはロングスカートをめくり、太股に備え付けられたポシェットから金貨を取り出した。その綺麗な脚からは、そこはかとなくスケベ臭が漂う。
「む、顔色1つ変えないとは……ちょっと悲しいかな」
「……1500Gか。よし、受けよう」
「じゃあ明日、地下5階で宜しくね。クリスタちゃんには伝えておくからさ」
「おい、流石に装備無しは……」
「じゃあコレ貸してあげる」
先程壁に穴を開けた刀をカズハから受け取る。
「まあ、これなら行けるだろう」
「にゃはは、それじゃ決まり~!」
面倒事と分かっているも、無一文なロードは金の力には逆らえなかった……。




