夜会
寺院の近く。錆びついた扉が重々しい古くからある小さな酒場。
今では常連か通しか通わず、秘密の会合や人目を忍ぶには持って来いの店であった。
「リーダー遅いな……」
エルがビールの飲みほし、干し肉を齧りながら話す。
「まぁまぁ、気長に待とうよ」
フェリーが小さいコップでチビチビとワインを飲んでいた。
「お前はいいよな。いくら飲んでも屁でもねぇ量でさ!」
「そんな大きいグラスで飲んだらオイラ溺れちまうよ!!」
「はは!ちげえねぇ!」
そんな2人のやり取りを横目で見つつ、リースは静かにリキュールを嗜んでいた。
「すまん、待たせたな……」
リーダーが大きな麻袋を机に置き、椅子に座った。
麻袋からは金の音がし、一同は目の色を変えた。
「いいって事よ!金があれば言う事無しだ!!」
顔の赤いエルは金の音だけで上機嫌になった。
「随分と時間かかったのね……」
「誰かさんの蘇生料のせいでな……!依頼人に交渉するの大変だったぜ〜」
リーダーは麻袋から金貨を1枚ずつ取り出し、均等に配分する。
「まずは今日の仕事の分け前だ」
各自目の前に分けられた金貨を見て喜びの表情を出す。
エルに至っては追加で高い酒を頼みだした。
「そして、これが蘇生料だ……」
麻袋から出された小さな布袋。
リースは中身を確認し、静かにしまった。
「確かに頂戴したわ」
にこやかな笑顔を交わすリース。
「今回の事はギルドにも報告済みだ。勿論仕事の事は秘密にしたが……。7階の未探索箇所と呪文禁止区域も、地図が出来れば正式に報酬が出るだろう」
「とりあえず無事に戻れたのも皆のおかげだ。ありがとう!」
深々と頭を下げるリーダー。
そんなリーダーを見て、一同は顔を合わせ微笑んだ。
「俺たちが上手く立ち回れるのはリーダーの指示のおかげだ。こちらこそありがとう」
鼻をこすりながら恥ずかしそうに話すエル。
「さあ!仕事の話はこれくらいにしてここからは俺の奢りだ!好きなだけ飲み食いしてくれ!」
リーダーがまだ中身の入った麻袋を酒場のオーナーへ渡す。
『好きなだけ』と言うと本当に好きなだけ飲まれるので、先にお金を渡し、その範囲内でオーナーに抑えてもらっている。
余ったら次に持越しだ。その場に居合わせた他の客にも料理や酒が振る舞われる。
その為エルが多少騒いでも穏便に済んでいるのだ。
4人の夜会は遅くまで行われた……。
街灯りも消え皆が寝静まった頃、4人は解散となった。
闇に溶け込みそうな冷たい空気を肺いっぱいに吸い込み、酒の香りを街へと解き放つ。
昼間の凄惨な光景とは裏腹に、街はとても静かで平和であった。
まるであの時の光景が嘘であったかの様に……。
寺院へ戻り、上着を椅子へかけるリース。
服を脱ぎ、シャワーを浴びるとそのまま裸でベッドへ潜り、深い眠りへとついた……。