過去の栄光を求めて ②
風邪をひきまして、更新が遅くなってしまいました。
この章では、薄味キャラが狂気に染まる感じをお楽しみ頂けると幸いです。
夜明け前の寺院の物陰に3人の男が静かに棺を置く。
そのまま立ち去る男達を、物陰から覗いていた男がいた。
「あれじゃあ増えていく一方だ」
リースが寺院を留守にする際に、城へ代理のプリーストを要請したのだが未だに来る気配が無い。王が失意の最中、城の政が機能していないのだろう……。
やがて日が昇り、寺院の扉が開くと穏やかな表情のクリスタが現れる。男は見計らった様に姿を現しクリスタに声を掛けた。
「……やあ」
なんと雑な挨拶だろうだろうか。
しかしなんと彼は、昨日気が向いたら……と言いながらも翌日朝早くから寺院を訪れてしまった事に今気が付いたのだ。何と声を掛けて良いのか分からず本来無骨で寡黙な彼には『やあ』の二文字が限界であった。
「おはようございます。昨日はありがとうございました」
落ち着きを取り戻したのだろうか、昨日とは打って変わってとても落ち着いた、年の頃にしては妙に大人びた雰囲気を感じた。
「コイツらは増えていくばかりだな。さっきも誰かが棄ててったぞ」
「そうですか。早速ですが、蘇生作業を手伝って頂けませんか?」
表情を崩すこと無く、彼女は静かに微笑んだ。
「え?」
「気が向いたのですよね?」
俺がお人好し過ぎるのだろうか?
それとも彼女が人の隙間に取り入るのが上手いだけだろうか?
ここで帰る選択肢を選ぶのは……無い気がする。
「あ、ああ。どれを運べば良いんだ?」
「こっちのコケが生えた柩をお願いします。あ、中は絶対開けないで下さいね♪」
彼はドロドロに腐敗した遺体を想像して嗚咽しそうになった。
寺院の中は少し荒れており、窓ガラスはヒビ割れ、机や椅子には欠損が目立った。留守中に賊が荒らしたのだろうか?彼は深くは追求せず柩を運ぶことに集中した。
「この上でいいのか?」
「はい。ありがとうございます」
クリスタは蘇生用の祭壇の前に置かれた柩を軽く撫でると、準備に取り掛かった。
「使えるのか?」
「説明書を読みました。これまで10人くらい蘇生させてます」
「……何人灰にした?」
「……2人です」
初心者にしては中々の好成績だ。
信仰心の少ない者が蘇生を行うと、大抵5割を下回る。
「出来ました。蘇生を始めますね」
「ああ……」
(城にある祭壇での蘇生は何度も見ているが、大体の造りは一緒のようだな。まあ、城の祭壇は悪趣味な装飾品が山ほど着いていたが……)
クリスタは、目を閉じて祈り始めた。
(……まだ祈るのか?もう1時間程経つぞ)
その時、クリスタの口が静かに動き始めた。
(ようやくささやきに入ったか……)
(……長い!30分もささやいてるぞ!)
通常、蘇生の儀式は5分程で終わる。しかし、クリスタの儀式は異常なまでに長かった!
(お、流石に詠唱は延ばせないか)
蘇生の呪文の詠唱が終わると、クリスタは全力で祈り始めた!
「神よ!」
柩の中から僅かに漂う腐敗臭の色が薄くなる。どうやら成功している様だ。中からガタゴトと音がし、人の声が聞こえた。
「開けてくれー!」
クリスタは笑顔で微笑むと、柩へ駆け寄る。
「はい、ただいま開けますよ」
中から出て来たみすぼらしいエルフの男は、辺りを見回し己の状況を理解した。
「そうか……俺は仲間から見捨てられたのか……」
「大丈夫です。貴方はこうやって神の思し召しによって奇跡的に蘇ったのですから!」
「ありがとうシスター。それで、お代の方は少し待って貰えないだろうか?持ち物も仲間に盗られてしまったようで……」
「お代なんて結構です。私は困っている人のお手伝いをしただけですから」
エルフの男は涙ぐみ、クリスタにお礼を言うと、笑顔で寺院を後にした。
「あんだけ長い儀式してタダ働きか……」
「お待たせしてすみません。お茶をお入れしますね」
クリスタは顔色1つ変えず笑顔のままキッチンへ消えた。
「これだけ長いと一日1回が限度か?」
「体調の良い日は2回ですね」
出されたお茶を飲みながら2人は窓の外を眺めていた。窓の外に映る棺の山は、終わることの無い書類の山よりも悩ましかった……。
「で?蘇生代の代わりにどうやって稼ぐんだ?」
「勿論ダンションです。午後から行きますので護衛をお願い出来ませんか?勿論お代はお支払い致します」
クリスタの言葉に彼は僅かながら嫌悪感を示した。
(昨日今日会ったばかりでここまで使われるとはな……。この女、自分はおろか、身内の苦労も気にしないタイプだな。ある意味狂ってる。ここに来たのは失敗だったな……)
「……やっぱりご迷惑でしたか?」
クリスタの表情が曇る。
「俺は高いぞ?」
体よくあしらう口実をちらつかせてみるも、クリスタには逆効果であった。
「来て頂けるんですね!?嬉しいです!」
クリスタは満面の笑みで男の手を握りしめた!
「あ……そう言えばお名前を聞いていませんでしたね?」
「あ~……過去の名はとうに捨てた。好きに呼んでくれ」
クリスタは2、3考えて口を開いた。
「ロード……さん。てのは如何ですか?」
「ああ、結構だ……」
男は考えるのを止め、とりあえず今回はクリスタに付き合うことにした。後で法外な護衛料金を請求すれば二度と世話になることも無いだろう……。そう考えていた。
評価オナシャス!センセンシャル!




