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―WizardRye― 〜灰だらけのシスターと酒まみれの冒険者〜  作者: しいたけ
棺の山のクリスタと堕ちた男
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過去の栄光を求めて ①

 薄暗いダンションの地下4階で、喧嘩を始めた冒険者パーティがいた。

 きっかけは1つの宝箱だ。中身の取り合いは冒険者ならよくあることだが、そこに命のやり取りが加わると壮絶な争いと化す。リザードマンの大男とドワーフの筋肉男が武器を振り回し、火花を散らしていた!

 その後ろでは同じパーティの人間の少女とエルフの男が怯えるように隠れていた。


「ちっ、面倒な奴らだ。命を賭ける程のお宝じゃねーだろが……」


 争いを避け、1人足早に帰路に着く男。

 頭はボサボサ、ヒゲは伸びっぱなし。服はデタラメで見るからに不潔臭が漂う。唯一まともなのは、その手に握られたシンプルなデザインの斧だけだった……。


「全く、最近はろくな奴が居ない。……まぁ俺もその1人か」


 後ろを振り向くと、先程までの争いの音はせず、すすり泣く声が聞こえてきた。


「まさか……」


 男が急いで戻ると、そこには少女の首に手をかけるドワーフの大男が居た!!

 足下にはリザードマンとエルフの首が転がっており、無残に潰されていた。

 少女に抗う力は無く、目からは涙が滴り落ちるだけだった。


「止めろ!!」

 男が大声を上げると、ドワーフはゆっくりと振り返り鼻で笑った。


「ふんっ。ノコノコと戻って来やがったのか。まあいい、見られたからにはお前も殺さなくちゃならなくなったな!!」


 少女の首から手を離し、地面に置いてあった血に塗れた剣を拾い上げると、豪快に振りかぶり力任せに男ごと地面に叩きつけ様とした!


 地面が削れ、つぶてが辺りに飛散する。

 ドワーフが舌舐めずりをすると、ドワーフの剣が地面に落ちた……。

「?」

 右腕の違和感に気付いた瞬間にはもうそこには何も無く、たった今まで自分の物だった腕は肉体を離れ、言うことを聞かなくなる……。


「!!」

「ああああああああ!!!!」


 ドワーフの絶叫がダンションに響き渡るも、同情する者は1人とて居ない。

 1人逃げ出すドワーフ!しかし、弱った獲物を逃がす程このダンションは甘くない。絶叫(SOS)を聞きつけ現れたオークが、狙い澄ましたかの様にドワーフの頭を棍棒で打ち付けた!


 地面でもんどり打つドワーフ。


 オークは転がるドワーフを更に殴りつけると、動かなくなったのを確認し、ダンションの闇へと引きずっていった……。




「大丈夫か?」

 ドワーフの腕を切り落とした斧を投げ捨て、少女へと駆け寄る。


「エホッ!エホッ!」

「慌てなくていい。もう何も怖いことは無い」


 暫くの安静の後、少女は落ち着きを取り戻す。


「助けていただきありがとうございます。このご恩は一生忘れません……」

 少女は深く頭を下げた。


「礼はいい。俺はただ、外道を始末しただけだ。それより、地上へ送ろう。行けるか?」

「ええ。それよりこの人達は……」

 地面に転がる首を指差し、少女は困惑の表情を見せた。


「すまない。俺は蘇生呪文()使えないし、寺院に払う金も持ってない。生憎俺はケチな背教者でな」

「お金なら大丈夫です。すみませんが運んで頂けないでしょうか?」


 少女の言葉に男は怪訝な顔を示した。

(金持ちか?まあ、いい。死体に驚かない辺り、場数は踏んでいるようだが……)




 リザードマンとエルフを引きずり、2人は地上へと戻る。


 寺院の前には順番待ちの棺が山のように重なっており、さながら棺の花道が出来ていた。

 死体を棺に入れ、そろそろ置き場の無くなってきた裏手へと運ぶ。


「で?どうするんだ?確か寺院のシスターは暫く前に居なくなったと聞くが……」

 男の話をよそに、少女は寺院の扉の前で跪き、針金を使いカギ開けを行っていた。


「お、おい……!」

  ガチャリ……


 寺院の鍵を開けると、少女はにこやかに笑った。


「陽気な妖精さんに教えて貰ったんですよ。ここは好きに使っていいそうです」

 男の脳裏に1人の妖精が思い浮かぶ。

(こんな事を教えるのはアイツらしか居ないだろうな……)


「すみません。ご紹介が遅れました。わたしは最近ここで働くことにしましたクリスタと申します。まあ、プリーストとしては駆け出しですが」

 少女が頭をポリポリとかいた。


「そうか、宜しくな」

 男が踵を返し、帰ろうとする。

「あ、あの!……見た所、お金に困っているようですが、宜しければ一緒に働きませんか?」

「ふ、面白い冗談だ……」

「治癒呪文、使えるんですよね?君主(ロード)さん?」

 男は振り返りクリスタを睨みつけた。しかしクリスタは怯まず前を見つめる。


「貴方から善のオーラを感じます。そしてあの強さ。戦士にしておくには勿体ないかと……」


「ただの小娘かと思ったが、中々洞察力はある様だな……。気が向いたらまた来るよ」

 男はそう言い残し、寺院を後にした。

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