ならず者の教え ①
酒瓶は男3人の手であっという間に空になってしまい、エルは酒瓶に水道の水を入れ、冷蔵庫に静かに戻した。
「……帰る前に学園とやらを少し見てくか」
「あ、オイラも行くよ……ヒック!」
思ったより強い酒だったらしく、2人は顔が真っ赤に染まっていた。
「俺は先に行ってるぞ~」
リーダーは一足先に陽気な足取りで宿へと向かった。
残された2人は酒の勢いのまま学園内をふらつき始めた
「定番は女子更衣室か?」
エルの卑猥な顔が、酷く学園に似つかわしくない。
「クソガキ達の着替え覗いても面白くも何ともないでしょ……」
長命な種族からしたら、学園に通う生徒たちは赤ん坊の様にしか見えていないようだ。
とある部室の前を通り中を覗く2人は、顔を似合わせてニヤリと微笑んだ。
「くく、もしかして同じ事考えてた?」
「ああ、多分な」
2人は嬉しそうにメイジ部の扉を開いた。
「ええっ!? どちら様で!!」
怪しげな本を開いて難しそうな顔をしていた学生達は、謎の来訪者に一斉に驚きの顔を見せた。
「入部希望者でーす!」
エルは軽いノリで空いている椅子へと座り、酒臭い空気を部室中に振りまいては勉強中の生徒へと絡み始めた。
「こ、困ります!先生を呼びますよ!!」
「待て待て、今は俺が先生だ!」
突拍子も無い嘘をつくエル。
呪文で扉にカギをかけ、外へ出れなくした。
「あ、開かない!」
「まあ、座れ。今から俺様が特別授業をしてやるぞ~。それも教えてやる」
と、エルは扉を指差した。
「どれどれ……うわ!随分と古臭い本読んでるな。これ俺が修行時代に師匠から貰った本より古いぞ!」
エルは机に置いてあった本をペラペラとめくり、終盤のページに目が留まる。
「……これ使える奴いるか?」
エルが開いたページには、強力な火焔呪文の使い方が載っていた。
生徒たちは無言でお互いの顔を見た。
「これ、今からお前らでも使えるようにしてやる」
と、机にあった誰かのノートに勝手に何かを書き出した。
そのノートを見た生徒たちの、それまで不審者を見る目が尊敬の眼差しへと変わる。
「す、すげぇ……」
思わず生徒たちの声が漏れた。
「多分ここじゃ教えてくれねぇだろうよ。詠唱短縮のコツは呪文の本質を掴むことだ。そして極限までイメージを高めろ。この2つで全てが変わる」
と、話した所で1人の生徒から特大の火焔呪文が飛び出した!
放たれた火焔は部室の天井を焼き、辺りに焦げ臭い匂いが充満する……。
「な? 簡単だろ?」
「すげー!! 先生もっと教えてくれ!」
生徒たちがエルの周りに群がる。
「おう、おう。いっぱい教えてやるぞ!」
何だか楽しくなってきたエルは、周りが見えなくなるほどに知識を披露した。
「オイラ、他の所見てくるよ」
楽しそうなエルを横目に扉のカギを解錠したフェリーは、再び学園内をうろつき始めた……。
「さ~て……どうしようかな?……っと」
フェリーの前を、マヌケそうなホビットが歩いていた。
「見るからに出来の悪そうな……」
ホビットはとある教室へと入っていった。
* シーフ部 *
「ヤバい、何だろ?この胸の高鳴りは……」
部室を覗き、ひたむきに宝箱と向き合う生徒たちに、フェリーは居ても立っても居られず部室の扉を開いた!
「オイラも混ぜて!!」
フェリーとシーフ部たちは直ぐに意気投合し、遅くまで熱く語り合った……




