先生たちの出陣
「――では参りましょう」
教頭先生を筆頭に、教師陣で結成されたパーティが新たに見つかった地下へと歩を進みだした。
久方ぶりの実戦に、胸が躍るドワーフの戦士。
ジャージ姿に斧1つ。軽装は自信の表れか愚かさの象徴か……。
ウェーブのかかった白髪混じりの長髪に小さな眼鏡が特徴の年老いたエルフの女性メイジは、常に怒った様な顔で生徒に怖れられている。
同じく実戦は久しぶりだが、特に緊張もせず表情も崩れない。
一際目立つドラゴン族の男。装備品も整っており、腰には物騒な刀が存在感を匂わせている。
マッチョドラゴンとして男性生徒達には人気だが、女生徒からは距離を置かれている。
そして教頭のフェアリーは、小さな装備品を身につけて後ろを飛んでいる。
その顔は険しく、責任を一挙に引き受けた顔をしていた。
「ほう……これはこれは……」
「中々に広いですな」
男性陣は楽しそうにダンジョンを眺めていた。
「遊びじゃ無いんですから、早く終わらせますよ」
「出現モンスターの確認が最優先です」
女性陣は仕事として割り切っているようだ……。
四人がダンジョンを進むと、ウサギの群れが現れた。
「危険なモンスターです」
教頭先生がメモを取る。
エルフメイジがウサギ達を凍り付かせる。
前衛二人が武器を握りしめたまま、後ろを向いた。
「先生、少しは手加減して下さいよ~」
「斬りたかったですな……」
「だから遊びじゃ無いんです!!」
エルフが男性陣を一喝した。
地下3階を軽く探索すると、更なる地下への階段を発見した4人。
そのまま地下4階へと降りていく……。
視界には靄がかかり、極度に湿った空気とカビ臭ささが4人を持てなす。
「酷い臭いだ!」
ドワーフが手で鼻を押さえ、しかめっ面で岩の壁を指でなぞった。
岩には所々に苔が生えており、天井からは水滴も落ちていた。
「……慎重に行きましょう」
教頭の言葉通り、4人はやや視界の悪い道を慎重に歩いて行くが、濡れた地面は汚れておらず、生物の気配がまるで感じられなかった。
「モンスターが……居ない?」
ドラゴンが耳を澄ますが、その耳に聞こえてくるのは水滴の音だけだった。
「どうやら……足の無い奴等みたいね!」
エルフの声で周囲の異変に気が付くが、既にガス状の霊体に道を塞がれ、覚悟を決める時間になっていた!!
蠢くガス 4
「ふん!!」
ドラゴンが刀でガスを切り裂くが、直ぐに元通りの塊に戻ってしまった。
「物理攻撃が通用しないのか!?」
ドワーフとドラゴンがいくら武器を振り回そうがガスが怯むことは無く、身体に侵入してくるガスの一部が彼等の身体を蝕んでいった。
「全く……なんて情けない」
エルフが人差し指で眼鏡を直す仕草をした後、落ち着いて呪文の詠唱を始めた。
教頭先生はガスに触れて毒や麻痺になった前衛二人の治療に当たる。
「しっかり!」
「す、すみません……」
エルフの詠唱が終わると手の先から激しい風が吹き出し、ガス達を遠くへと吹き飛ばした。
「さ、今のうちに逃げますよ!」
治療を終え、元気になった二人と一緒に全員で地下3階へと全力で駆け抜ける。
「――はぁ、はぁ、はぁ……」
息が上がる4人。
「……流石にアレはどうしようも無いですね」
「一度地上へ戻って作戦を立て直しましょう」
教師としての面目が云々の前に自分の命が無くなっては仕方ないので、4人は泣く泣く地上へと戻っていった。




