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死地より愛を込めて ④

 押し合いの末、お互いに距離を取り息を切らしながら睨み合う。


 ベネットは大きく首を振ると、角に刺さったエルを地面へと投げ捨てた。

 投げられたエルはピクリともに動かず、息は既に無かった。

 リーダーはそれを眉1つ動かさず見ていた……。



 ベネットが息を整える前に、カリンが矢を放つ!


 ベネットは刃こぼれした曲刀で辛うじて弾き返した。

 しかし、矢は2本打たれており、弾き終わったベネットの左肩に矢が突き刺さった。


 カリンを睨みつけたベネット。一瞬の余所見をリーダーが襲いかかった!


 重い一撃がベネットの曲刀にのし掛かる。

 ボロボロの曲刀が根元から折れるもベネットは瞬時に引き、辛うじて斬擊を躱す。


 リースはフェリーの治療を終え、2人が再び戦闘に加わる。


「あいつ、エルをよくも……」

 フェリーの極めて静かな怒りがベネットへと向けられた。

 妖精用の小さな服を脱ぐと、フェリーは全裸に小刀だけの出で立ちとなり、ベネットへと突進した!


 素早い動きで撹乱し、ベネットが右を向いては左から斬りつけ、左を向いては右から斬りつけ、太く硬い首を刎ねることは出来なくとも、じわりじわりとその身体を傷つけていった。


 その動きは、周りの仲間達も追うことが出来ず、フェリーの本気を垣間見たリーダーはフェリーに当てぬようベネットの足を狙い、大剣を払う。


 ベネットはリーダーの攻撃を避けようと後方へジャンプしようとした瞬間、脇腹に強烈な激痛が走る!


「へへ、逃がさねぇよ……」


 グレイだ!!



 彼は座り込む様に腰を落とし、ベネットに刺さったままの槍を押さえては重りの様に負荷をかけた!


 回避しそこねた足へ、大剣が容赦無く斬り込まれていく!

 ベネットの右脚膝下への一撃でベネットはバランスを崩し倒れ込んだ!


「リーダートドメを!」

 リースは無意識に叫んでいた。



 横向きに倒れたベネットの背後にリーダーが立つ。

 大剣を大きく構えた姿は、斬首刑が執行される直前の様であった。



 ………………胴から離れたサイ頭は2回程転がると、グレイの横へ落ち着いた。


「ざまぁみろ……」

 グレイはベネットの首を軽く蹴飛ばし、槍の回収へ向かった。



「リース。エルを頼むぞ」

 リーダーは冷たくなったエルを抱え、仰向けに寝せる。


「ええ、任せて!」


 リースはエルへ高位の治癒呪文を唱えた。

 しかし、死体となったエルの傷が癒えることはない。


「?」

 グレイが首を傾げた。


「おまじないよ。理由は分からないけど、こうすると蘇生率が上がるらしいの」



 リースは蘇生の辞を囁き始めた――


 蘇生呪文の詠唱に入ると、エルの身体が徐々に光り出す。


 リースは呪文を唱えながら、静かに祈り始めた。


 エルを包む光りが最高潮へ達すると、リースは強く念じた!!







 ……そこにはエルの遺灰しか残らなかった





「……どうして!?」

 リースが肩を落とす。


「どうしてこういう時に成功しないのよ!?」

 リースは自分の脚を思い切り殴りつけた。


「だから普段からもっと体力付けろって言ったのに!!」

 リースは止め処なく溢れ出る涙を堪える事が出来なかった。



「リース。もう一度頼む……」


 リーダーがリースの肩に手を置いた。


「これ以上私を追い込むつもり?」

 リースの顔は涙と鼻水で酷くグチャグチャになっている。


「代われるなら俺がやりたいが、お前にしか出来ないんだ……」

 リーダーの顔が曇る。


「大丈夫だ。誰もお前を責めやしないよ」


 リースが周りを見ると、全員が頷くようにリースを見守っていた。



「………………分かった。もう一度やるわ」


 リースは灰だけになったエルの顔を思い出しながら、蘇生を始めた……。

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