ドラゴンの巣 ①
城兵達が慌ただしくダンションへ入っていく姿を、リーダー達は近くから覗いていた。
「何かあったみたいね」
密かに後をつけていたデアス隊が岩に押し潰されたナデシコ隊を発見し兵たちに衝撃が走る。
救助隊が出動するもナデシコの姿は見当たらず、現在も探索が行われている。
「俺達も行くぞ」
リーダーが各々の顔を見渡す。
グレイ。フェリー。エル。カリン。リース。
全員が緊張した面持ちでリーダーを見る。
エルの転移呪文で地下6階へ飛んだ6人は、直ちに辺りを警戒した。
「リース、エル。最大補助呪文で頼む」
「オーケー」
久々の地下6階は相変わらず不気味な質感で6人を出迎え、遠くからは城兵らしき足音が鳴り響いていた。
「まずはマップを埋めよう」
リーダーが先頭を歩き出し、未探索箇所をマッピングしていく。罠や敵の詳細まで書かれた地図や情報は、他の冒険者に高く売れる。城へ報告すれば報奨金が貰えるし良いこと尽くめだ。
「よし、次だ」
地下7階への道を後へ残し、小部屋へと潜入する6人。
小部屋は誰も居らず、部屋の片隅には光り輝く金色の宝箱が散開しているのが見えた。
「お~……」
6人から思わず声が漏れる。
宝箱へ近付くと、そこには木の枝や藁のような植物で作られた巨大な巣の様な物があり、その中に宝箱が点々として置いてあった。
鳥が光り物を集めたかのだろうか?
昔読んだ冒険物語に出て来そうな財宝の山に、固唾を飲む一同。
幸い、主は不在のようでカリンとグレイが周囲の警戒に当たった。
「リーダー!これ全部罠がかかってないよ?」
フェリーがあり得ない程不思議な状況に首を傾げたが、呪文による鑑定を行っても罠はかかっていない様だった。
「よし1つずつ開けよう」
フェリーが宝箱を開ける。
「え?」
マヌケな声に、一同は宝箱を覗き込んだ。
なんと、中身はボロボロの革の鎧が1つ入っているだけで、二重底や隠しポケットを疑ったが、何の変哲も無い宝箱に安い革の鎧が入っているだけに間違いは無かった。
「ま、まだ一つ目だから……」
しかし次も、その次も、宝箱に入っているのは低価な装備やアイテムばかりで、とても金の宝箱に見合った中身では無かった。
肩すかしを食らった彼等は肩を落とす……。
「リーダー?」
フェリーは寂しげな瞳でリーダーを見つめた。
「用は済んだ。早めにずらかるぞ」
6人が小部屋を出ようとしたとき、通路の奥から唸るような声と響く足音が聞こえてきた。
「ケチ野郎のお帰りだ。歓迎してやれ!」
リーダーの言葉を皮切りに、武器を構え戦闘態勢に入る。
6人を見つけた巣の主は歩調を早め、鼻息荒く、不在の隙にお邪魔した侵入者を盛大に歓迎した!
腐敗したドラゴン 1
小部屋の主であるドラゴンは、身体の所々が腐敗して崩れて骨が見えていた。
不快な腐敗臭とグロテスクな見た目に思わず目を背けたくなったが、迫り来る吐き気を堪え、6人はドラゴンへ立ち向かった。
カリンの矢が、ドラゴンの目の横に命中した。
しかしドラゴンは怯むこと無く、今にも崩れ落ちそうな爪でリーダーを狙った!
「おっと! あんまり触りたくねぇなあ」
リーダーは大剣で爪を受けると、ドラゴンの爪が1つ崩れて地面に落ちる……。
「そらよ!」
エルが火焔呪文を凝縮し、無数の炎の矢となりてドラゴンを襲撃!
液状化した身体は次々に剥がれ落ち、ドラゴンはその形を保つことが出来なくなった!
骨だけと化したドラゴン……
しかしその意地は肉体を超え、骨だけの身体は轟々と輝きを放ち、しきりに顎を開いては彼等を威嚇する!!
「オイラこんな凄いの初めて見たよ……」
「大丈夫。全員その筈だ……」
リーダーは神々しい命の輝きと対面するも、この場では己の命より重いものは無い。速やかに陣形を組み直し、神と対峙する構えを取った!




