地下6階
冷え切った岩壁と闇。わずかな光を頼りに1歩1歩先へ進むリース達。
地下6階は今までより更に凶悪な魔物が数多く生息している。
このダンジョンは未発見の魔物もおり、エンカウント直後の識別が生死を分ける事なんてよくある話しであった。
岩壁の通路が3つに分岐しており、そのうちの右の通路の入り口に小さく文字が書いてあった。
*未探索*
これは前回リース達が書いた物であり、またこのダンジョンを探索する冒険者たちへの警告と挑戦状を兼ねていた。
「……慎重にな」
リーダーが息を潜め、小さく歩き出した。
未探索の通路は狭く、大型の魔物が通れない幅であった。
「見ろ、小さなフンが沢山あるぞ」
リーダーが指さす先には通路の奥まで小動物のフンがそこらじゅうに落ちていた。
「大きさからいってウサギより一回り大きいくらいだな。おそらくこいつらの根城になっているんだろう」
フンを避けながら進むリース。エルは気にせず踏み進む。
通路の突き当りがT字路になっていた。
天井付近から、静かに覗くフェリー。しかし暗くて良く見えない。
「右から空気の流れを微かに感じる。左は行き止まりの様だが……」
リーダーが僅かな手掛かりで先を探る。
「で?どっちから行く?」
エルが鼻息高くリーダーに尋ねた。
「当然左からだ」
リーダーが素早く通路を左へ曲がり、後ろから3人が援護する。
曲がった先は行き止まりになっており、傍らに冒険者らしい死体が1つ。
死体は至る所を齧られており、顔の判別は出来ず、右脚の殆どが食われ骨だけであった。
「リース、いけるか?」
「いいけど、高いわよ。5200Gってとこかしら?」
蘇生呪文を唱え始めるリース。手のひらに白い光が集まり、死体が見る見るうちに治っていく。
リースが今使っている呪文はほぼ確実に蘇生出来る呪文だ。
しかし1日に2回しか使えない。Lvが上がればもう少し使える様になるのだが……。
「……3800」
ボソっとリーダーが値引き交渉に入った。
「5150」
さらりと応じるリース。こちらは値引き率が悪い。
「4000」
「5100」
「4200」
「5075」
値引き率が下がった。
「分かった。5000だ」
痺れを切らしたリーダー。しぶしぶ了承する。
「そうね、それくらいならいいかな」
値引き交渉している合間に、死体は生前の姿を取り戻す。
元死体の茶髪の青年は地下6階に来れる様な実力者には見えず、何か訳ありの様に見えた。
しかし、青年の意識は失ったままで目覚めるには時間がかかりそうだった。
「聞いてた特徴と一致する。こいつで間違いないな。エル、頼む」
「はいよ」
「リース、脱出呪文だ」
「了解」
エルが青年をおんぶして立ち上がろう壁に手を着いた瞬間、カチリ と金属音が小さく鳴った。
*おっとっと!*
足元が崩れ巨大な落とし穴に落ちた4人は、更なる地下へと落ちていった……。