覚醒のコットン ①
あの日、コットンは男になった……。
ダンジョンの入り口にハリー隊のリーダーであるハリーとニーナ、それとフェリーが居た。
「すみませんフェリーさん。お嬢様がもう冒険者は嫌だと辞めてしまって、シーフ職に困ってしまいまして……」
ハリーが眼鏡をクイッと上げて、フェリーに事の経緯を説明する。
「いやぁ、可愛い後輩の頼みだもん。オイラならいつでも大丈夫さ!」
と豪語するフェリーだが、前金はしっかり貰ってある……。
「すみません、遅れました」
「遅いぞコット――――」
そこにいたのは彼らが知る、臆病で内気で情けなくて頼りないコットンとは似ても似つかず、逞しく凛々しい髪の毛をツンツンに立てたホビットであった。
「え?……コットン?」
ニーナが思わず聞き返した。
「ああ、ボクだよ」
その声には一点の迷いも無く、これからダンジョンで起こるであろう探索の事だけを考えている顔であった。
3人が顔を寄せ、コソコソと話し始めた……。
「ちょっと、アレ誰よ……」
「一応コットンって名乗ってるけど……」
「オイラの記憶によると知らない人だね……」
突如変貌したコットン?に戸惑いを隠せない3人。
「さあ、行こうか!」
コットンは先頭を切ってダンジョンへ入っていった。
「何かの強がりかしら……?とりあえず行きましょ」
ニーナたちはコットンの後へ続いた。
今日の目的は地下4階の探索。以前ハリー隊は少しだけ探索したが、コットンが恐怖に慄き結局帰ってしまった。
「地下4階に着いたのに顔色一つ変わらないわね……」
「とりあえず慎重に行こうな……」
ハリーを先頭に、慎重に歩を進める。
突如、天井の岩陰の隙間からオークメイジがドドドと現れた!!
「わーーーー!!」
パニックに陥るハリー。
突然の事にニーナも驚き竦み上がっていた。
「落ち着いて一旦引こう!」
フェリーが咄嗟に指示を飛ばした。
ハリー達の後ろから、ブクブクと沸騰する赤黒い粘液が大量に現れ、オークメイジの群れを包み込む!
オークメイジはもがき抗うも、粘液に含まれる致死性の毒に当てられ瞬く間に動かなくなった……。
……………………無言で後ろを見るハリーたち。
そこには手のひらを敵に向け、無詠唱で呪文を飛ばしたコットンがいた。
「コットン……君がやったのか?」
ハリーはオークメイジの奇襲以上に恐怖していた。
もう彼の知るコットンではない。
一撃で敵を葬る威力に想像を絶する何かを感じた。
「ああ、ボクの呪文だ。皆ケガはなかったかい?」
凛々しい顔には謙虚さに満ち溢れ、傲慢や過信は微塵も無かった。
フェリーは無詠唱での呪文に1つの結論に至る。
「サキュバスに教わったのかい?」
その言葉に、ニーナが驚きの顔を見せた。
「多分そうだと思います……」
コットンは不思議な表情を見せた。
「多分?」
ニーナが追及する。
「一緒に宿で2人の手作り料理を食べたら記憶が無くなっていて、気が付いたらこうなっていたんです」
コットンは申し訳無さそうにした。
「コットン……」
フェリーがコットンに近づいた。
何かを察したコットンは少し身構えた。
「後でオイラにも食べさせておくれ!!!!」
心からの願いであった……。




