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サキとアンナ ③

 3人はダンジョンの入口へ到着した。


「誰か居ねえかな……」


 エルは入り口付近にいる人の中から手ごろな人物を探し出す。


 ホビットの僧侶、コットンはダンジョンから帰ったばかりだったが、運悪くエルと目が合ってしまう……。


「お!居た居た」


 エルは説明もそこそこにコットンの首根っこを掴む。


「誰このカワイイの」

 姉妹がコットンに食いつく。


「回復役だ。念のため連れて行く」


 4人は異様な空気で人目を惹きつけながら、ダンジョンへ入っていった……。




「まずは肩慣らしだ」


 地下2階のモンスターを相手にアンナは自慢の剣を振り回す。


「ほぅ……」


 エルが感心するほどにアンナの剣術は高く、これなら地下4階くらいなら行けそうだと感じた。


「サキはどうだ?」


 サキの方を振り向くと、弾ける様に泡立つ強烈な臭気の粘液をかけられたモンスターがドロドロに溶けていた。


「そう言えば最初に会った時も結構強力な呪文使ってたっけ……」

 エルの無用な心配を余所に、姉妹は地下4階も余裕で突破してみせた。



「あ、あの……ボクそろそろ……」


 本来の実力を大幅に超え、地下5階に居るコットン。

 足は震え、逃げ出したい衝動でいっぱいだった。けど、一人で帰れないので祈りながらエルたちの後ろをついて行くしか彼に選択肢は無かった。


(帰りたい……)

 彼の緊張の糸は既にマイクロ単位の細さに擦り切れていた。



「コットン」


 急に真面目な顔つきになるエル。


「お前には才能がある。彼女らを見て勉強するんだ。大丈夫、お前なら出来る!」


 思わぬ激励に心打たれるコットンだったが、実際は居なくなると困るので適当に励ましただけだった。

 実際連れてくるのはプリーストなら誰でも良かったのだ……。


「エルさん……!!」


 コットンからやる気の炎が立ち上がるのが見える程、武器を構えアンナが闘うオークメイジへ突貫するコットンの姿は勇ましく映った!


 ボコッ!


 コットンの頭にオークメイジの杖がめり込む……。


「コットーーーーーーーン!」


 キュウ……と倒れるコットンを抱え、エルは脱出呪文を詠唱した。


「何々?帰るの?」

 姉妹がモンスターを適当にいなし、エルの下に近寄る。


「すまん、予定変更だ。プリーストがやられた」

 辺り一面を輝く光が取り囲み4人は地上へ降りたった。



 エルはすぐさま寺院へ駆け込んだ。


「珍しいお客さんね」


 コーヒータイム中のリースは椅子でのんびりお菓子を食べていた。


「すまん、死んじゃいないと思うが手当てを頼む」

 エルはポケットから小さな麻袋を取り出し、雑に机に置いた。

 リースは麻袋を持ち上げると、そこそこの重みに満足したのか再び机に置き、コットンの手当てを始めた。


 優しい光がコットンの頭部を包む……。


「終わったわ」


 コットンが目を覚まし周囲を見渡す。


「中々格好良かったぞ坊や♪」

 サキがコットンの頭を撫でる。


「ほれ、今日の稼ぎだ」

 エルは姉妹に金貨を10枚ずつ手渡した。


「ほい、お前にも」

 コットンはエルから金貨を10枚受け取る。


「え、いいんですか?」

 コットンは何もしていないのにお金を受け取る事に困惑していた。


「何言ってんだ。ダンジョンで得られた報酬は、パーティ全員で等しく分配だろう?」


 その言葉に、コットンは妙な嬉しさを感じた。


「これでスイートルームに泊まれるね」

 サキが嬉しそうにはしゃいだ。


「じゃ、行こうか♪」

 コットンの手を握るサキ。


「え? え?」

 コットンはこれから自分の身に何が起きるのか露知れず、姉妹に連れて行かれてしまった……。




「じゃ、俺もこれで……」


「あんた、体よくあの子を厄介払いに使ったわね?」


 エルは出来もしない口笛をスカスカ吹きながら、寺院を後にした。

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