サキとアンナ ①
まさかのハーレム展開!!
「で?」
酒場に集まった面々を前に、エルは言葉が出なかった。
「酔った勢いでダンジョン入って、魔法陣からまた出てきたと?」
「……はい」
リースの圧に一言返すのが精一杯のエル。
「オイラやっぱりエルの家に火を着けるよ♪」
フェリーの笑顔に本気の色が覗えた。
「良かったわね。夢にまで見たハーレムじゃない」
リースは極めて冷たく突き放すように、エルを見下ろした。
「待て、私はこの人の事は――」
妹のサキュバスの口を遮り、姉のサキが口を挟んだ。
「ごめんなさいね。もう魅了呪文は解けたんだけど、こっちの世界が居心地良くて……。もうしばらく厄介になるわ」
魅了呪文が解けていることを知り、少し安心するエル。
「貴方たちにも迷惑を掛けたわ。ごめんなさいね」
そう言い残し、2人は酒場を後にした。
「ま、こっちに迷惑掛けなきゃいいんじゃない?」
リースたちは小さな溜息と共に酒場を去った。
「まいったな……」
エルが自宅の扉を開けると、そこにはサキュバス姉妹がくつろいでいた。
「な!!」
エルは混乱している。
「あ、おかえりなさい」
サキが普通に返事をした。
「ど、どうして……?」
「他に行く所無いから来ちゃった。よろしくねダーリン♪」
「姉上、少し言い方が下品です……」
エルは手を顔に当て、神を呪った……。
「さ、まずは妹の名前を決めてあげて?」
「……どうぞ」
剣を構え渾身のポーズを決める妹。
エルは茫然自失のまま「アンナ」と名付けた。
机に座ったまま放心し動けないエル。
サキュバス姉妹が夕食を作る。
剣で食材を切っているが、突っ込む元気すら無い。
キノコスパゲッティとオニオンスープがエルの目の前に登場する。
普通にまともな食事に、エルの顔が少し戻る。
「どれどれ……」
口に入れた瞬間、脳がスパークするのを感じた。
己の精神と肉体が分離するかのような強烈な一撃に、エルは自我を失った。
「ワオ!やっぱり魔界の精力食材は効果が段違いだね♪」
「姉上……下品です」
「久々にエルと二人っきりで――」
パリン!
窓に映る3人の影は激しく入り乱れ、まるで3匹の蛇のが絡み合うかのように熱く激しかった……。
あまりの光景にフェリーはとっておきの酒を落してしまう。
黙って懐から取り出した火打石を打つフェリー。
火花はエルの家に向かって飛び出ている。
「うう……」
しかし、フェリーの顔から滴る涙が火打石を濡らし、火が着くことは無かった。
( 羨ましい!!!! )
心の中でそう叫び、フェリーは酒場へと駆けて行った……。




