とある冒険者の日記
――△月○日
明日は仲間と共に、地下5階へ挑戦する。
今までの特訓の成果を試す絶好の機会だ。
否応も無く、仲間の士気が上がる。
念のために、私という存在と探索の結果をここに記しておく。
――△月*日
地下5階に到着した。空気が一段と冷たい。
初めて見る魔物もいたが、数が少なかったので助かった。
私が戦闘で足を怪我したので彼女に治療をお願いした。
彼女の指先は冷えており思わず握って温めたくなったが、彼氏が目の前にるので止めた。
鎧に刺繍してあるトレードマークの熊が可愛い。
大変な事態となった。
オークメイジとオオカミに奇襲され、前衛が1人残らず死んでしまった……。
何とか逃げ延びたが成功率の低い蘇生呪文しか使えない彼女は、蘇生を躊躇っていた。
寺院の方が値段は高いが成功率は高い。
そう伝えたら彼女は精一杯の強がりで「早く脱出しないとね」と震える声で言った。
私は抱きしめたい思いで一杯だった……。
彼氏の死にかこつけて彼女を奪おうとしたのだ。
当然罪悪感はあったが、彼女への想いが勝った。
――△月#日
物陰に隠れ魔物をやり過ごし逃げ続ける事1日。
毒に侵されたメイジが力尽き、ついには方角すら分からなくなってしまった。
私は震える彼女を精一杯励ました。
手を握る事はもう慣れた。
寝ている間にキスをしようとして……止めた。
何をしに来ているのか分からなくなった。
彼女の呪文も残り僅かだ。何とか脱出しなければ……。
――△月$日
私は最悪だ。
昨晩、他の冒険者が近くを通った。
しかし、私はそれを無視した……。
彼女の時間が終わるのが嫌だったのだ。
私の心は何と醜い事だろう。
私を作った創造紳はきっと美意識が低いのだろう。
それか何かの罰か試練か……。
何にせよ私は神を信じていない。
私自身も信じられない。
信じているのは彼女の綺麗な心だけだ。
地下4階に戻れた。
ここまで来れば他の冒険者も頻繁に来るだろう。
もう冷たくなって時間の経つ彼女の手を握りしめ、私は適当な場所に腰を下ろした。
気が付けば意識を失い、数時間が過ぎていた……。
「大丈夫ですか?」
修道服の女が見えた。夢か幻か分からない。
もう少しだけ、彼女と2人きりにしてもらえませんか?
「彼女もそれを望んでいるのですか?」
私はその問いに答える事が出来なかった……。
シスターは一礼すると静かに去ってしまう。
そろそろ時間が来たようだ。彼女と一緒に終われる事を幸せに思う。
願わくば次も一緒に……。
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「目が覚めたかしら?」
「ごめんさなさいね。貴女の事、一回灰にしちゃった」
「あの……私の他には……」
「貴女1人だけだったわ。あ、お代は結構よ。今回はサービスしてあげる」
「すみません……」
「気を付けて帰るのよ」
彼女は熊の刺繍を一なぞりすると、寺院を後にした。
「次はまともな人が見つかるといいわね……」
リースは日記をゴミ箱へ投げ捨てた……。
読んで頂きありがとうございます!!
1ポイントでも良いので評価頂けると、やる気がビックバンとなり新たな宇宙が誕生します……。




