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ニーナの後輩 ①

 あどけなさが残る胸を張り、兵隊の行進の如く手足がカチコチなメイジが大通りを歩いていた。


 大通りにあるカフェテリア。外に置かれたパラソルの下で、華奢なエルフが椅子に腰掛け熱心に本を読んでいた。


 メイジの首が90°横へ向き、エルフの姿を捉える。


「あれは……エルさん?」


 緊張が解けたかの様に動きが急に滑らかになるメイジ。

 エルフのそばへと近付いた。


「エル……さん。ですよね?」


 メイジは戸惑った。以前見掛けたときに比べ、かなりやつれているのだ。

 一瞬声を掛けた事を後悔した……。


「え? あ~……っと……」

 恐らくエルであろう人物は、本を閉じ自分に声を掛けたメイジの事を思い出していた。


「ニーナです」


「そうそう。ニーナ、ニーナ」

 照れ笑いをするエルフの顔は酒場でよく見掛けるエルそのものであった。


「どうしたんですか?」

 と、そこへ大きめのシャツにホットパンツの女が、エルの隣へやって来た。


「ダーリンお待たせ♪」

 女は持っていた飲み物をエルに渡し、隣に腰掛けた。


(ずいぶん大人な女性ね。エルさんはこういう人が好きなのかな?)


 取りあえず聞きたいことに蓋をした。


「今日もダンジョンか?」

 エルは渡された飲み物を一口飲み、、、むせた。


「ゲホッ!! ゲボッッ!」


「おい、何だコレは!?」

 口に広がる謎の味に脳が悲鳴を上げる。


「マズかった? マカにマムシにスッポンと――」

 次々と名前が挙がる精力食材たちにニーナの顔が引きつった。


「すまんニーナ。それで、何だっけ?」

 甲斐甲斐しくエルの口を拭く女を無視し、ニーナは質問に答えることにした。


「学園の後輩がこの間卒業したから、今日ギルド登録に来るんですよ。今から迎えに行って一緒にダンジョンに行ってきます!」


 嬉しそうにニーナが答えた。


 この街の遠方に冒険者育成の為の学園が存在する。

 卒業生たちはダンジョンのある街でギルド登録をし、学園で培った経験を活かしてエリート冒険者を目指すのだ。



「ダンジョン経験者はニーナ1人か?」

 エルの目の色が少しだけ変わる。


「そうです。後は後輩達4人だけです」


「駆け出しの時は必ず暴走する奴が出て来る。

 経験豊かな前衛職を1人連れて行け」


 やつれたエルの言葉にも冒険者としての重みがあった。

 ニーナは素直に誰か探すことにした。





 ギルドは閑散としており、事務的な手続きを終えた後輩達が入口で手を振るニーナを見つけた。


「ニーナ先輩!お久しぶりです!!」

 男2人、女2人が揃って頭を下げる。


「久しぶりだね。皆見ない間に私より大きくなって……」

 挨拶もそこそこに、久々に会った彼女等は昔話に花が咲く。


「それでは先輩、宜しくお願いします!」

 ひとしきり話した後、目的のダンションの入口へ……。



「実は私1人じゃ心配で、優秀な冒険者をもう1人呼んでいるんだけど……いいかな?」


 


「やあ、こんにちは!

 オイラはフェリー。宜しくな!」


 フェリーがひょっこり木の陰から顔を出した。


「カワイイィィィーー!!」

 後輩女子達の黄色い歓声が上がる。


 こねくり回されるフェリー。

 まんざらでもない顔。

 思わず鼻の下が伸びる。


 ニーナがフェリーをひょいと持ち上げ後輩達から奪う。


「すみませんフェリーさん」


「いや君も中々だよ……」

 



 落ち着いた後輩達にニーナが説明を始める。


「それじゃあ確認するよ。

 アントン君はモンク。

 ダレン君は侍。

 ミルキーちゃんはバード。

 リリーちゃんはプリースト。

 で、私がメイジ。

 フェリーさんが忍者ね」


「忍者!?」

 後輩達の尊敬の眼差しが熱いほどフェリーに突き刺さる。


「まぁ、まぁ。オイラくらいになればね♪」

 渾身のドヤ顔。チョロい奴だ……。



「それじゃあ行こうか。無理は禁物だよ」


 後輩達を引き連れて、ニーナとフェリーはダンションへ入っていった……。

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