冒険者の意地 ④
通路を進むに連れて、酒の匂いが濃くなり煙草の様な香りも漂いだした。
6人がそれぞれ持ち前の技で気配を消し、恐らくはここの主がいると思われる派手な装飾が施された扉に近付いた……。
扉には
* 今日は終わり *
と書かれた白い札が掛かっており、扉の奥で気ままな休日を楽しんでいるのか、はたまた夜営業なのか。
そんな想像が頭をよぎるが、どうでも良くなりリーダーが静かにドアノブを回し、勢いよく突入した。
強烈な酒とタバコの匂いがリーダー達の鼻につく。
部屋のベッドの上で、上半身裸のポットパンツをはいた女が葉巻の煙を薫らせながら、静かにこちらを見た。
「ハァーイ。いらっしゃい……。
私の隣で彼が寝てるから少しだけ静かに、ね?」
リーダー達の存在、目的、能力を気にすること無く女はベッドで寝る男を指差した。
「話しが出来るならありがたい。
率直に聞こう。ココとお前達の事を」
部屋の扉を閉め、酒と煙の匂いが染み渡る6人。
カリンは矢をかけて、いつでも放てる準備をしていた。
「オーケィ。ここで争うのも嫌だわ。
全て話すから、まずはその物騒な物をしまって頂戴」
リーダーの目配せに矢をしまうカリン。
女は吸いかけの葉巻を切り、テーブルに置いてあった飲みかけの酒を飲み干した。
「この男は、城の召喚士だった人よ。
で、私は召喚の魔方陣で呼ばれたサキュバス」
女は横を向き、己に生えた可愛らしい尻尾を見せた。
「この男はココで私と暮らしてるの。
魔方陣から巨人達を出して、このダンジョンを作ったら、うっかり繋がっちゃてね」
「仕方なくグレーターデーモンを置いたんだけど、これも突破されて今に至るって感じかな?」
一通り説明を終え、立ち上がる女。緊張感も無く、交戦する意志は無さそうだ。
リーダーが口を開いた。
「その魔方陣のせいでダンジョンの秩序が乱れつつある。
早急に消して貰いたいんだが?」
少々、圧を効かせる。
女はお構いなしに答えた。
「嫌よ♪」
女が指を鳴らすと、リーダーの目つきが変わる。
まるで何かに取り付かれたかの様に虚ろな目で、大剣を構えては女の前に立ちはだかった!
「リーダー!!」
「ふふふ……」
女を守るように5人に対峙するリーダーの頭を撫でる女。
女が指を鳴らすと、今度はカリンとフェリーの様子が変わった。
リーダーの隣に並び同じく虚ろな目で、エル、グレイ、リースの3人に対し武器を構え敵意を剥き出しにした。
「これかなり不味いわよ」
リースがエルに目配せをする。
「魅了ってね、初恋の様な甘い恋心を植え込んだり、嫌悪と好意を逆転させたり、いいなって想いの階段を、全力で駆け上がらせたり、色々出来るのよ」
カリンの肩を抱き、フェリーの足をなぞる女。
また一つ、指が鳴る音がした。
「知ってるよ……」
「師匠はどんなに嫌われてる女でも、必ず物にしていたからな……」
「出来れば使いたくねぇんだけどよ!!」
エルの指音高く、澄んだ響きが部屋を包んだ。
「あぁ……エルしゃま~……」
女がトロンとした目をしたかと思うと、エルに抱き付き強烈なキスをし始めた!
華奢なエルは、獣と化した女の力に抗えず次々と唇を奪われていく……。
「うわ……引くわ……」
エルと女の姿に嫌悪を示しつつ、リースはリーダー達を治癒呪文で戻していった。
「危なかった……。すまんなリース」
正気を取り戻したリーダー達。
「お礼ならあっちに言って……」
顔を背けたまま、リースはエル達を指差した。
「エル様!好き!好き!好き!好き――」
「うわ、何あれ……」
フェリーが言葉を失う。
「最低の最低ね」
リースの一言に無言で頷くカリン。
「とりあえず……っと」
リーダーが起きそうに無い男を縛り上げ、リースが沈黙の呪文を掛けた。これで起きても大丈夫だ。
徐々に服を脱がされるエル。
必死の抵抗も虚しく、涙目でこちらに助けを求めた。
「終わるまで帰れないな。
グレイ、そっちを抑えてくれ」
2人係で暴れる女を引き剥がす。
「嫌!!エル様の――――を――――して――――が――――よ!!」
聞くに堪えない下品な言葉が飛び交う。
「取りあえず一回脱出呪文で3人を送ってきてくれ」
キスマークだらけ、服はボロボロのエルはグレイとカリンを連れて脱出した……。




