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エルの師匠

「今度はエルの昔話を聞かせてよ」


 全裸で街を闊歩し恥ずかしさのあまり、

 ダンジョンに行く事を止めた4人は酒場に居た。

 相も変わらず酒ばかり飲んでいる。


「そうだなぁ……」

 酒を手にしたまま遠い目をするエル。



 ――あれは俺が弟子入りしていた時の事だ。

 当時、高位のメイジとして何人かの

 エルフを探し、一番モテ無さそうな

 人に弟子入りした。


 勿論、俺がモテる為だ。


 師匠はドレッドヘアで服もボロボロ。

 筋肉質で、メイジと言うよりモンク

 みたいな人だった。


 師匠の教えは厳しかった。


 朝から晩まで呪文の修行だった。

 まともに寝る暇も無く、ただ修行漬けの

 日々を送った。

 後から聞いたんだが、師匠は自分よりモテそうな

 奴が入門すると逃げ出させる為に、わざと

 厳しくしていたんだと……。

 

 同時期に入門した奴らは大抵逃げちまった。

 俺も何回か逃げようと思った事があったが、

 決して逃げなかった。

 ある呪文を教えてもらうまでは

 頑張るって決めてたんだ――


「どうせろくでもない呪文でしょ?」

 リースがツッコミを入れた。

「くく、後でやってみせようか?」

 悪戯な笑顔でリースを見るエル。



 ――しかし、どんなに修行を頑張っても

 師匠は、俺に最後まであの呪文は教えてくれなかった。

 脱出呪文や最強攻撃呪文は普通に教えてくれるんだがな……。


 俺は意を決して師匠に聞いた。


 お前見てたのか……?

 ワシが店に居る所を……。


 俺は師匠がある酒場で女の子にモテモテだったのを

 たまたま見てしまったんだ……。

 一体どんな呪文を使ったんだ……って。


 お前にはまだ早い……。

 それ以上師匠は教えてくれなかった。


 俺は諦めなかった。

 こっそり店の外から師匠の言動を覗って、

 1年かかってようやく自力で習得したんだ――



「何か話しの方向性が怪しいわよ……」

 リースは、もはやまともに聞く気にもならなかった。


「それがこの呪文だ!」

 そう言うとエルは口を腕で隠し、

 ちかくの席に座っていたフェルプールの女に呪文を詠唱した。


 呪文をかけられた女はおもむろに席を立ち、

 とろけた顔で、エルの膝元に頭を擦り付け始めた。


 女の頭を撫でるエル……。


「最低……」

 あまりの光景に目を疑うリース。

 リーダーは微妙な顔をし、フェリーは目をキラキラさせた。


 エルが指を鳴らすと女はハッと元に戻り、

 何が起きたのか分からずそそくさと席へ戻った……。


「魅了呪文で人の心を操ったところで、所詮かりそめさ……」

 そう語るエルの顔はどことなく寂しそうであった。



 その夜、フェリーはこっそり魅了呪文の練習をした……。

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