全裸先輩
wizお馴染みの全裸忍者……
「昔、オイラの先輩忍者に全裸先輩てのが居てね……」
唐突に始まったフェリーの昔話。
いつもの酒場に、いつもの仲間といつもの酒。
何時になくペースの早いフェリーは、
かなり酔いが回っていた。
――全裸先輩は皆の憧れだった。
どうしていつも全裸なんですか?
全裸の方が何故か敵の攻撃が当たらないんだ。
オイラは最初そんなアホなって思ったよ。
全裸先輩はいつも1人だった。
どうしていつも1人なんですか?
誰も俺とパーティを組んでくれないんだ……。
そりゃそうだ。全裸の男妖精と誰が居たがるか!
ある日、仲間たちと全裸先輩の後を追ったんだ。
全裸先輩は迫り来るモンスターの首を刎ね、
ダンジョンの奥へ進んでった。
オイラは初めて先輩の容姿を見て、
格好いいって思ったよ。
気が付いたらオイラも全裸になって
先輩の隣で闘ってたよ。
次の日から誰もオイラに近付かなくなった。
唯一全裸先輩を除いて……。
オイラは先輩とパーティを組むことにした。
全裸組って呼ばれたけど、
成績はダントツで良かった。
先輩が居たから全裸でも安心できたんだ。
ある日先輩が遠くへ行った。
新しいダンジョンを探索しに行ったんだ。
それっきり先輩とは連絡が着かなくなった……。
オイラは1人でいつものダンジョンへ行ったさ。
1人で全裸だととても孤独だった……。
先輩が闘っていたのは『孤独』と言う名のモンスターだったんだ!!
オイラはそれっきり全裸を止めた。
月日が経ち、オイラの全裸を知る者が減ると
再びオイラと話してくれる人が増えた。
人との会話が暖かかった……。
そして今に至るのさ――
「何それ……」
リースが枝豆を摘まみながら呆れかえっていた。
「おおお!いい話だなぁ~!」
エルは号泣し、リーダーは腕を組み頷いていた。
「私がおかしいのかしら……?」
リースは少し不安になった。
――翌日――
リースが集合場所に集まると、そこには
全裸のエルとリーダーがいた。
「何で!?」
リースは開いた口が塞がらない。
「俺達も全裸で防御力を上げようと
思ってさ!」
自信満々に答えるエル。
その瞳に微塵の曇りも無かった。
そこへ二日酔いのフェリーがやって来て……
「おい、フェリー!
どうだ、これで俺達強くなったぞ!」
と、エルが自慢の華奢な身体を自慢した。
「全裸で強くなるのは忍者だけだよ?」
その言葉に全身を赤くして急に恥じらいだした2人。
「ははは!全くどうしようも無いね」
フェリーは笑いながら泣いた……。