地下1階、未探索地域より
「おい!地下1階で未探索箇所が見つかったぞ!!」
偶然発見された未探索箇所。冒険者の間ではもっぱらその話で持ち切りだった。
「リーダー。俺たちは行かねぇのかい?」
ため息交じりのエルがぼやいた。
皆が1階へ行っている為、昼間のカフェは他に誰も居なかった。
「皆1階で鮨詰め状態……。行きたくても行けないよ」
1階は冒険者でパンパンになっており、
ダンジョン自体へ出入りすら難しくなっていた。
「1階だから誰も死なないしね〜」
あまりの暇ぶりに寺院を抜け出したリース。
「オイラ暇過ぎて死にそうだ〜」
机の上で干からびる様にへたり込むフェリー。
「何が出るかお楽しみってとこだな! 場合によっちゃ俺たちの出番も有るぞ」
イスをプラプラさせてのんびりするリーダー。
「号外ーー!! 号外だよーー!!」
「ほらきた!」
新聞を配るオッサンから号外を受け取るリーダー。
* おっとっと シュート *
――新たに発見された地下1階未探索地域の
呪文禁止区域の中には更なる地下への落とし穴が!
現在バリテルチーム他が探索中にて続報を待て――
「だってよ」
号外を机に置き、浮かない顔をするリーダー。
「バリテルが行けるなら俺たちなら余裕じゃねえか!?浮かない顔してどうしたんだ?」
顔をウキウキさせるエル。
「大抵こういう時、手柄欲しさに無茶して死ぬ奴がいてな。回収するの誰だと思ってるんだ?大して金持ってないくせによ……」
と、珍しく悪態を突くリーダー。
「ふふ、そう言えば昔バリテルの部隊が泣きついて来た事があったわね」
思い出し笑いをするリース。
「あの時は酷かったな。酒飲んでる時にいきなりやってきて助けて下さいー!だもんな。何かと思えばパーティが壊滅して散り散りになって1人で脱出したから残りのメンバーを助けてくれ!って、バリテルのとこのメイジが土下座しやがったよ」
その時の事を思い出し、少しムカムカしてきたリーダー。
「確かその時のメイジってハゲのチョビヒゲじゃなかった?」
「そうそう。良く覚えてるな」
思わず笑うリーダー。
「来てるわよ……」
リーダーの後ろを指差すリース。
一同が指差す方を見ると、見事にハゲた頭に
鼻に着く様なチョビヒゲのオッサンメイジが土下座をしていた。
「助けて下さいーーーー!!」
大声で懇願するオッサンに、リーダーは露骨に嫌そうな顔をした。
「今日は休みだよ……」
前を向き直し、リースの顔を見た。
「行ってあげたら?」
オッサンに憐みの目を向け、リースは微笑んだ。
「金は?」
「ありません!!」
ここまで来ると潔いオッサン。
「帰ろう」
リーダーが席を立つ。
慌てたオッサンがリーダーの足にしがみつき泣き喚いた。
「条件がある。1つ、未探索地域で見つけた者を全てこちらへ譲渡する事。2つ、未探索地域で得た情報を全てこちらへ教える事。3つ、手柄は全てこちらの物とする。以上だ」
リーダーの条件に黙って頷きまくるオッサン。
「よし、それじゃあ仕事といくか!」
リーダーの掛け声と共に3人は席を立ち、
鮨詰めダンジョンへと入っていった……。