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番外編 ~飲んだくれの足跡~

「エルおじさん!」


 無邪気な笑顔の子どもが、ひっしりとエルの脚にしがみつく。


「アンジェラ!元気してたか?」

 屈託の無い笑顔を見せるエル。


「ねーねー!また呪文を覚えたの!見てて見てて!」

 子どもは拙い言葉で呪文を詠唱すると、氷の刃が木へと突き刺さった。


「こらこら、子どもが使う呪文じゃないぞ?」

「え~!だってママがパパに昨日も使ってたよ!」


「コラ!変なことを言うんじゃありません!」

 ドタドタと家から出て来た女性は、赤子を抱きかかえながら子どもを叱りつけた。


「……リース。子どもの前であまり呪文を使うなよ?子どもはすぐ覚えちまうからな」

「文句ならあの人に言ってよ!いくら稼いでもすぐ酒代に消える!」

 リースは赤子をあやしながら、普段の愚痴を漏らし始めた。



「エルおじさん。コレあげる!」

 今度は少年が小さな宝箱をエルに差し出した。


「エックス!この前の爆弾は中々に良かったぞ?今度はなんだぁ?」

 エルが宝箱を開けると、中から白い煙が…………


「おっとぉ!?」

 エルは何やら楽しそうに喜んでいる。


「で、これは何だいエックス?」

「玉手箱!エルおじさんお誕生日おめでとう!」


「…………いやいやいやいや待て待て待て待て」

 真顔に戻ったエルは、こっそり逃げようとするフェリーを掴まえた。

「お前か?」

「へへ、オイラが教えました……」

 ニッコリと笑い合う2人だが、眼の奥は笑っていない。


「おい!俺の一年を返せ!!」

「ゴメンよー!」

 子どもの手前怒るに怒れないエルは何とか怒りを静め冷静さを取り戻そうとする。



「おーい、帰ったぞ~!」

「あ、パパ!」

「とーちゃん!」

「おかえりなさい」


「よう、2人揃ってどうした?」

 リーダーが2人を見るなりにこやかに笑う。


「いや、様子見だよ。巧くやっているなら何よりだ」

 エルは至って冷静に返した。


「嘘つけ、どうせ金目の話か危ない話だろう?」

「……流石にリーダーの眼は誤魔化せないか」

「いや、単純にエルが嘘つくのが下手なんだ……いて」

 エルはすかさずフェリーにデコピンを喰らわせた。


「正解は金目の危ない話だ。地下9階で未探索エリアが発見された。さて……どうする?」

 エルはニヤリと笑いかける。その顔は何処か楽しんでいるようだ。


 リーダーはリースを一目見る。リースは察したかの様に切り出した。


「はいはい、行ってらっしゃい。私は留守番してるわよ」

「パパ頑張って!」

「とーちゃんファイト~!」

「アブブブ!」

 子ども達がリーダーへ声援を送った。それに応えるようにリーダーは笑顔で手を振る。


「くく、探索で気持ちが高ぶる度にお盛んだからな……4人目も直ぐだろうな、くくく!」

「まーた悪いこと考えてるよ……」

 フェリーは呆れた顔でエルを見た。


「ところで新しいプリーストは見付かったのか?」

「そうそう!聞いてくれ!何と飛び切りの美女プリーストが見付かったぞ!」

 エルの顔がとろけるようにニヤけだした。


「どうも初めまして。ミンティと言います」

 ダンジョンの入口で待ち合わせていたプリーストは、線の細いエルフで、透き通るような透明感と硝子細工の様な繊細さを持った美しい人物だった。


「うへへ!宜しくね!ミンティちゃん♪」

「ミンティちゃん可愛いね~!」

 ゲス2人組は早速新しいプリーストに夢中のようだ。


「……私、♂ですよ?」


「さ、行くぞ」

「オイラもそう思ったとこだよ」

 2人は冷め切った顔でさっさとダンジョンへと向かった……。


「すまんな、変な奴等で……馴れればただのアホだって気付くと思うからさ」

 何とか取り繕うも、ミンティは引きつった笑顔が戻らない。


「転移するぞ~」

 一同を優しい光が包む――――





「とーちゃん遅いね~」

「どうせいつも通り飲んでるに決まってるわよ……」

「飲んじゃ駄目なの?」

「駄目って訳じゃないけれど……何か寂しいのよね……」


「ただいま~っと」

 ほんのり顔を赤くしたリーダーが家へと上がる。


「おかえりなさい。どうだった?」

「いや~……ゲスが1人増えてしまったよ……」

「?」




「で!そこで閃いたのが、皮膚の表面をサーチしてエネルギー体で作り出す呪文っす!」

「マジか!?」

「ミンティ師匠万歳!!」


「行くっすよ~!」

 ベロンベロンのミンティが呪文を詠唱すると、何も無い空間に裸体のエルが鮮明に映し出された。


「まさかの俺!?」

「おえーっ!!」

「あ、すみません間違えましたっす」


 酔いどれ共の飽くなき欲望は、留まることを知らず夜は更けていくのであった…………。

ラストになります。

長らくの間、読んで頂きまして誠にありがとうございました!


また、何処かでお会い致しましょう!

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