黒炎の月 昼 ①
最終章の開幕です
「急げ!何かダンジョンの様子が変だぞ!!」
リーダーは物言わぬ冷たいリースを抱え走っていた。
地下の岩壁は赤黒く灯り、モンスター達は凶暴性を増している。本来なら下層にしか出ない魔物が上層まで登って来ていたりもした。
グレイを抱え先頭を走るロードは、昔城の図書で読んだ文献を思い出していた。
――数百年に一度訪れる黒炎の月。ダンジョンの魔を増幅させ生態系を乱す物。混沌の破壊者となる――
何故か転移呪文が効かなくなったダンジョンの1階1階をかなりの速度で登っていく一同。ダンジョンのモンスター達が騒がしく鳴いているのが聞こえてくる。
――地下3階――
ウサギの目は赤黒さを増しており、牙を剥き出しにした口からは容赦無くヨダレが滴り落ちる。普段は自衛の為に牙を剥くことの多いウサギ達が殺意に目覚め一同を取り囲む!!
黒炎のリーパーバニー 4
エルは素早く火炎呪文でウサギ達を焼き払う!
「ピギィ!!」と悲鳴を上げ毛が燃えさかるが、ウサギ達の目は死んでいない。
「ウサギですら凶暴化しているのか!?」
リーダーがウサギを斬り捨るも他のウサギは怯むことは無い。
「……危険」
突進するウサギの目にカリンの矢が命中する。しかしウサギの勢いは止まらない!!
「危ない!」
フェリーの斬擊がウサギの首を確実に刎ねた。まるで死を怖れぬウサギ達に一同は戦慄した。
ロードが他のウサギを始末した所で、一同は再び急ぎ足で地上を目指す。
――地下1階――
――それは突然の再開だった。
「な……ナデシコか!?」
ロードの前に突如として現れたメカニカルな女性。顔は白く身体は淡い水色のボディ。顔以外は面影すら残っていなかったが、ロードは直感でそれがナデシコであると確信した。
「na……ナ、デ、シ、コ……?」
僅かに開いた口から機械的な言葉を口にする。その表情は無機質で冷たく感情の欠片すら感じ取れなかった。
「おい大丈夫か!?」
リーダーがロードに声を掛けた。
「間違いない!何があったが知らないが、コイツはナデシコだ!さあ、帰ろう!」
ロードがナデシコの手を取ろうとすると、恐ろしく冷たい闇がナデシコを攫う。
「!?」
一同が面を喰らっていると、その闇から老人が姿を現した。
「おっと!まだ試験の段階だ。触られちゃ困る。あの2人をやった貴様等は早々に死ぬがよい!! ふはははは!!」
老人とナデシコは姿を消し、残った闇が怪しい光を放ち始めた……。
「逃げろ!!」
エルの掛け声に一同は急いで地上へと駆け込む!!
地上は暗く、空に赤黒く輝く月食だけが目立っていた。
その瞬間、大きな爆音と号炎が地下1階から地鳴りのように響き渡る!!
「うわあ!」
「何だ!?」
その威力は凄まじく、ダンジョンへの入口から黙々とドス黒い煙が立ち込めていた……。
「アレがワーナーなのか……?」
ロードは絶えぬ疑問に頭が追い付かないでいた。
「凄まじい魔力だった……アイツが黒幕で決まりだな」
エルは息切れしながらも、生還できた喜びに浸っていた。
「一先ず蘇生が先だ!寺院へ急ごう!」
リーダーは疲れた脚を奮い立たせ、寺院へと急いだ。
「クリスタ!!……カズハ!!……居るのか!!」
寺院の中にロードの声が響き渡る。すると、直ぐさまカズハが現れた。
「旦那!無事だったんだね!!」
「ああ、何とかな。だが蘇生が必要な人が出た。クリスタは居るか?」
「………………」
「……カズハ?」
カズハは祭壇の影にへたり込む様に座るクリスタを静かに指差した。
そこには血の涙を流すクリスタが居た……。




