8.病んだ勇者は気分転換しに行くようです
イリスが仲間になった翌日、俺たちはなるべく目立たないように朝早くにエルメテシアを出た。
昼間に町を出ようとして、パレードなんてやられたら大迷惑だし。
そして俺たちは町から少し離れた場所で馬車に揺られていた。
「そういえばなんですが、次はどこに行きましょう?」
そう、セリカに言われた。
実は、まだ行き先を決めていない。ぶっちゃけ此処のことあんまり知らないし。
「俺は別にどこでもいいぞ。この世界の事はあんまり知らないし」
「私は、戦力を少しでも増やすために、魔法都市エリュシオンに行きたいのですが……。どうですか、ゼロ殿?」
そう、イリスが言った。
確かに戦力が欲しいからいいかもしれない。
魔法とかも使ってみたかったし。
「私は、港町に行きたいですね。近くの港町に良い食材が入ったと聞きましたので」
そう、トモエが言った。
流石は料理好きなトモエだ。
トモエが作るものは本当に美味しいし、良いかもしれない。
「私は、ちょっと遠くなってしまいますけど“セイルレーン”に行きたいですね。理由はゼロ様の、精神面の回復です」
そう、セリカが言った。
やっぱりセリカは優しい。
エルメテシアでの、あの修練で病んだ俺をまだ心配してくれている。
俺は一瞬、セリカを天使か女神に見間違えてしまった。
「セイルレーンですか。あそこは情景都市とも呼ばれる良い場所ですし、貿易が盛んでな場所でもありますから私はセリカ様に賛成です」
「なぜゼロ殿の精神面の回復が必要なのかはわからないが、私も賛成だ」
一瞬イリスに修練のせいだと言ってやりたくなった。
どうやら意見が一致したらしい。
セイルレーンか………どんな所だろうか。
そんな事を考えながら、俺は馬車に再び揺られていた。
三日ほど馬車に揺られながら、セイルレーンがどんな場所か考えていたが、待ちきれなくなってセリカに聞いてみた。
「そういえば、セイルレーンってどういう所なんだ?」
「セイルレーンですか?そういえばゼロ様は、この世界のことをあまりご存知ではなかったですね。セイルレーンは情景都市とも言われるとても綺麗な街で、この国で一番大きい貿易都市なんです。情景都市の由縁は行ってみれば分かりますよ」
セリカの話を聞く限り、いい街みたいだ。
そのせいか余計に気になる。
「そういえばですが、最近は大丈夫ですか?ちゃんと眠れているかが心配なんです」
やっぱりセリカは天使か女神なんじゃないかと思ってしまった。
「ああ、最近といっても三日しか経ってないけど、大丈夫だ」
「そうですか、それが聞けて嬉しいです」
俺、引きこもってばかりでロクな暮らしをしてなかったし、友人とかいなかったけど、やっと良い人に会えたんだな。
俺は、そう思ってしまった。
こんにちは、澪です。
セリカの描写をしていると、どうしても天使か女神かにしか思えません。
あと、次話の投稿がもしかしたら2月の分と同じ日になるかもしれません。
それでは、次回をお楽しみに!