5.勇者一行は前代の勇者の仲間に会いに行くようです
あれから数日、俺たちはエルメテシアの近くまで来ていた。
俺の目には城塞が見えている。
「そういえば、どれくらい滞在しますかゼロ様」
そういえばそのことを考えてなかった。
「そうだな……とりあえず、それなりに剣を使えるようになるまでかな」
まあとりあえず適当に言ってみた。
「そうですか。それなら意外に早く出発できそうですね。勇者は武芸の習得が早いそうですから」
想定外のことを言われた。
そもそもそんなこと聞いてない、むしろ早く言って欲しかった。
俺が元いた世界でやっていたことといえば、引きこもってゲームをしていただけだ。
言い換えると、家内弁慶だった気がするけど、今はどうでもよかった。
ついでで、剣なんて持ったことすらない。
そもそも引きこもっていたおかげで、体なんて動かしていない。
そもそも運動が嫌いだったし、ゲームばっかやってたし。
「聖女様、勇者様、そろそろ着きますよ」
そう、トモエさんが言ってきた。
「そういえば、セリカは着いたら何をするんだ?」
「そうですね、ゼロ様を騎士団がいる修練場まで案内してから、教会に行こうかと思っております」
聖女らしいのかな?なんだか教会で祈りを捧げてる様子が浮かんでくるな。
セリカって元々綺麗だし、スタイルも良いし、祈ってるところも綺麗なんだろうなぁ。
そんな事を考えながら、馬車に揺られていた。
城門に着いた俺たちは検問の順番待ちをしていた。
トモエによると、近頃何かと物騒らしいようで、検問を強化しているらしい。
「でも意外ですね。エルメテシアは騎士団が守っているので安心だと思っていたんですけど。まあ、しょうがないですよね。魔王軍が進行してきてるんですし、何かあったようですし」
「そうなのか?」
「ええ、でも何があったのかは聞いていませんが………」
何があったのか気になるが、騎士団がどんな感じなのか想像しながら、俺は検問の順番を待った。
しばらくして、検問の順番が回ってきた。
「身分を証明するものを提示し、積荷を見せよ!」
そう指示を受け、トモエは国王の印を見せた。
門番はそれを見るに、他の門番を呼び寄せた。
「恐れながら馬車に乗られているお方の名を答えては貰いませんか」
そう言われたトモエは、俺とセリカに馬車から出て名乗るように言ってきた。
「私の名はセリカ。セリカ・レム・セインティリア」
へえ、これがセリカの本名なのかと思いながら、俺は名を名乗った。
「我が名はゼロ。ゼロ・アスタロト。魔王討伐を国王に命じられ、旅をしているものだ!」
「なんと!勇者様であらせましたか!これは失礼致しました。そして、その勇者様がどのようなご用件でエルメテシアにお越しになられたのでしょうか」
要件を話すと、騎士団がいる修練場まで案内してくれた。
案内というか、完全に歓迎に近かった。
修練場に着くと、セリカは教会に行った。
そして、俺は団長の執務室に案内された。
「団長、勇者様をお連れしましたが、入室してよろしいでしょうか」
『入って良いぞ』
「それでは失礼します」
そしてそこにいたのは、1人の女騎士だった。
「ようこそ、エルメテシアへ。お初にお目にかかる、私の名は、イリステラ。イリステラ・アイシア・エルメテシアだ。気楽にイリスと呼んでくれ。我々は御身を歓迎する。そして、何用で来られたのか聞いてよろしいだろうか」
そう言われたので此処に来た理由を話した。
「………なるほど、そういう事ですか。つまり剣術を学びたいという事ですね」
「一つ聞いて良いか」
「何でしょうか」
「団長なのはわかったんだけど………女だよな」
気になったからとりあえず聞いてみた。
「そうだが………何か問題でもあるのか?」
「いや、別に問題はないけど………こんなにも綺麗な人が騎士団の団長なんだなって思って」
「なっ何を言いますか⁉︎わっ私が綺麗だなんてそんなこと………///」
予想通り、デレた。
堅物な女騎士に限って、綺麗だとか可愛いだとか言われると大抵はこの反応をする。
やっぱり此処は異世界だ。
勇者になってこの世界に幻滅したけど、それ以外の楽しみがあったんだった。
そんなことを思い出していた。
「……コホンッ、それはいいとして、私の父上がその人なのだが………先月、お亡くなりになられた」
………そんなこと聞いてねー。
ていうか、立ち直り早すぎだろ。
「だが安心してくれ。私も父上に仕込まれていてだな、あの人には劣るが剣の腕は確かだ。ということで私が教えよう」
………なんだかんだで剣術を習うことになった。
こんにちは、澪です。
投稿が遅くなった理由は高校の文化祭準備のためです。
今回の話の補足をすると現団長の父親は2日前に亡くなっていて、その時森の中にいたため、報せが遅れています。
それでは次回にまたお会いしましょう。