12.戦いを終えた勇者は少しだけ自信を持ったようです
一瞬で目の前に迫ってきた拳を紙一重で避けながら、俺はどう倒すかをまた考えていた。
_________爆裂魔法で灰にしようとしても黒焦げになるだけだし、剣で切ろうとしてもあの速さじゃ簡単に避けられそうだし、本当にどうしようか。
今の俺ではアニメとかの勇者みたいなことはできないし、そんな簡単には………………
________そう言えば身体強化系の魔法があったっけ。
さっきセリカにかけてもらったのは確か支援魔法だし、重ねが消しても大丈夫かな。
そんな事を考えても仕方なかったので、とりあえずやってみた。
『強者たりし武神よ 無力たりし我に力を授けよ』
…………………あれ、なんで何も起きないんだ?
結果的に不発に終わった。
この時の本人は魔力が足りなかったと思っていたが、ただ単に支援魔法を二重にかけられない事を知ったのはまた別のことである。
__________ダメだったか。じゃあ剣に魔法を付与できないかな?
マ〇クラとかで武器に効果を付与したら効率が上がったり、攻撃力が上がったりするし。
どこぞやの前世二つ持ってる聖剣使いとかもやってたし。
さっきは失敗したけど物は試しっていうし、やってみるか。
『武神の眷属たりし剣の精よ、我が祈りに招来し刀身に力を与えたまえ』
今度は成功したようで、持っている剣に光が宿った。
込めたイメージは『属性変化』と『強化』
剣自体の切れ味を上げ、纏わせる属性を自在に変化させることができる。
だからエクスカリバーみたいなことも今ならできる。
「ソンナ事ヲシテモ、俺ニハ勝テナ…………………」
そうオークが言い終わる前には、俺は奴の腕を切り落としていた。
纏わせた属性は『風』
これなら奴より速く動くことができる。
さっきの魔法では戦斧しか切れなかったけど、今のはさっきよりも速い。
本当だったら俺の体は速さに耐え切れずにそのまま動けなくなったんだろうけど、腕を切り落としに行ったあの瞬間に俺の体は光に覆われた。
だがこれがセリカの魔法の力だと知るのは、この戦いが終わった後だった。
「ヤットヤルヨウニナッタカ。ダガ、オ前モココデ終ワリダ」
そう言い放ち、また一瞬で俺の目の前まで距離を詰めてくるが……………
「ジギルって言ったっけ?悪いな、終わるのはお前のほうだ。恨みは何もないけど、ここで果ててもらう。じゃあな、ジギル」
そう、俺が言い放った刹那……………………ジギルの体は跡形もなく切り刻まれていた。
それと同時に俺は、少しだけ脱力感を覚えた。
その後、魔王軍幹部ジギルの死を知った魔王軍は撤退し、街は安泰が訪れた。
俺が戻ってきたときにはいつの間にか凱旋パレードが始まっており、それに巻き込まれる形で凱旋することになった。
「はあ、疲れたから早く休みたいのに………………」
「別に良いじゃないですか。魔王軍幹部を倒したのは紛れもなく勇者様なのですから」
そうやって俺の隣にいた騎士が言ってくる。
「それに団長の話を聞く限り、これが初めての実戦経験みたいですけど、初戦でここまでできる人はそういませんよ」
この騎士の言葉のおかげで、俺は少しだけ自信を持てた気がした。
こんにちは、澪です。
今回は変な終わり方して本当にすいません。
それでは、次回をお楽しみに。