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流星レイニー(2)


 規則的に並べられた街灯がばちばちと跳ねるように光る。

 その下で、アタシたちは二つの影を闇に紛れさせながら歩いていた。


「さっき見てたアニメって面白いの?」


「んー、あれは内容よりキャラとキャストで見てるな」


 ハルちゃんと出会い、裕理と知り合ってから、アタシはアニメ関連の知識が増えた。

 元々小説や漫画はよく読んでいたから、裕理のオタク趣味にもそれほど抵抗はない。ただ、残念なイケメンってこういう人ねと思うだけ。


「ヒロインが可愛いの?」


「ヒロインじゃないよ。普段は格好良いんだけど、好きな人の前だと照れて可愛くなるキャラがいるんだ。そいつが一番好き」


「ふぅん。裕理って、いつもそういうキャラ好きになるわね」


 きょとん、とした顔で首を傾げる裕理に、アタシは見せ付けるようにため息を吐く。

 気付いてないのかしら。


「裕理が好きになるキャラって、いっつもハルちゃんそっくり」


 並んでいた足音が、止まる。

 数歩進んで振り返れば、裕理は目を丸くしてアタシを見つめていた。

 外身は格好良いのに、実は脆くて放っておけないタイプのキャラクターが、裕理の好み。

 何度か三人でアニメを見たときに、裕理の萌えるタイプはそういうキャラが多いって気付いた。

 そしてそれは、ハルちゃんにそっくりだと気付くのに時間は掛からなかった。

 アタシは、わざとゆっくりと身体ごと振り返る。

 学生なら、スカートの裾がひらりと綺麗に翻るように、意識して。

 アタシの自慢の黒髪が、重力など知らぬように舞う。


「アタシ、裕理は友達で恋敵だと思ってる」


「……!」


 裕理のことだけは、認めてるってことよ。

 アタシは微笑みを浮かべて、裕理から目を逸らさずにその場に立っていた。

 裕理は茫然とアタシを見つめている。

 馬鹿ね、気付かれてないと思っていたの?

 でも、確かに気付かれないように細心の注意を払っていたものね。

 幼なじみとして、それ以上の線は踏み越えないように慎重に、慎重に、ハルちゃんの隣を歩いていた。

 隣でずっとハルちゃんを守っていた。

 ハルちゃんに近づく男たちはハルちゃんの身体しか見てない馬鹿ばかりだったけど、裕理は違う。

 裕理は、ハルちゃんを好き。

 だからアタシは、どうしてもこの男を嫌いにはなれなかった。


「……何、言ってんだよ。俺、三次元の女には興味ないけど」


 誤魔化そうとする裕理。

 強気に口元に弧を描いたけど、一瞬、アタシから目を逸らしたでしょ。

 アタシの頬が緩む。

 嘘つくなら、もっと堂々としないと見破られるわ。


「この前告白されたとき、そう答えてたもんねぇ」


「そーだよ。それに、春緒は幼なじみだぞ? 前にも言ったけど、兄弟みたいなんだよ」


 無理矢理に笑うと、裕理は歩きだす。

 大きな歩幅で離れていたアタシとの距離をすぐに詰めると、手荒ではないが強引に腕を引かれた。

 話を変えたがっているのは、明らかだった。


「裕理、ずるい」


 近所迷惑にならない程度にアタシは声を荒げる。

 裕理は聞こえぬふりをし、足を進める。

 裕理がアタシを無視するのなら、アタシも裕理の都合は無視する。

 理不尽には、理不尽をぶつける。


「アタシはハルちゃんが好き。性別なんて関係ない。大好き」


「……」


「ハルちゃんに幸せになってほしい。ハルちゃんに笑っていてほしい。ハルちゃんに傷つかないでほしい」


「……」


 ばち、と電灯が叫んだ。

 アタシを非難するみたいで、耳障り。

 アタシは益々ムキになり、裕理の後ろから隣へと並んだ。

 顔は見ず、前を向きながら言葉を続ける。


「ハルちゃんを守ってあげたい。裕理だって、そうでしょう? アタシと、おんなじでしょう?」


 違うなんて、言わせない。

 言ったら二度と、ハルちゃんに近付けさせない。

 裕理の歩幅に合わせ、アタシはいつもより早足に歩く。

 あぁ、裕理っていつもはアタシとハルちゃんに合わせて歩いてくれていたんだ。

 裕理はアタシを真似してこっちを見ないまま、苛立ち混じりに吐き捨てる。


「奈津乃が男と寝ることで、春緒は傷ついてるだろ」


 少し黙って、裕理は「ごめん」と呟いた。


「お前最近、そういうの減ったよな」


 ハルちゃんと出会って、惹かれ合ってから、無くなりはしなかったけど、頻度は極端に減った。

 そして、僅かな過ちの中の大半にはある共通点がある。

 アタシ、誰かに言ったことなかったのに。

 アタシが裕理を見ていたように、裕理もアタシを見ていたのね。

 だってアタシたち、ハルちゃんが好きだから。


「奈津乃は最近、春緒に興味を持ってる奴とばかり寝てるよね」


 落ち着きを取り戻してか、裕理は言葉遣いが少し穏やかになっていた。

 アタシは何も言えずに、目を伏せる。


「少しでも隙を見せたらコロッと心変わりするような男に、大事な春緒はあげない……て感じか?」


 アタシたちって、似たもの同士なのかしら?

 アタシの考え、全部裕理にばれてる。

 だって、嫌なの。

 もし、もしもハルちゃんに好きな男が出来たとしたら、身を引かなきゃいけないってわかってる。

 ハルちゃんが本当に好きな人と一緒にいることがハルちゃんの幸せ。

 今はそれがアタシなだけで、未来には変わってしまうかもしれない。

 変わりたくないと願うのは嘘じゃない。

 だからせめて、変わってしまうのならハルちゃんを本当に愛している人に奪われたい。

 女なら誰でもよくて、ハルちゃんの見た目がいいから抱きたいだけの男には、あげない。

 あげるわけない。

 だからね、アタシが隙を見せたらすぐに付いてくるような男かそうじゃないか、確かめたかったのよ。

 最近寝た相手もそう。

 同じ学科の四年。

 いい家の一人息子らしくて、お金には困っていない。

 まぁ、そこまで興味無かったからアタシも適当に話に相づちを打っていただけなんだけどね。

 今までハルちゃんに近づこうとしていた男の中で、アタシと寝なかった男はいない。

 唯一、裕理だけを除いては。


「奈津乃、初めの頃は俺にも色目使ってきたな」


「そうだった? ぜんぜーん覚えてない」


 嘘。

 ちゃんと覚えてる。


『俺、三次元の女に興味ないから』


 真面目な顔で、ふざけるように、裕理はそう言った。


「二次元専門って、ある意味では防衛線よね」


「覚えてんじゃん」


 アタシは小さく笑い、裕理を見上げた。

 裕理は困惑した瞳をアタシに向けている。

 認めなさいよ、とアタシは唇を尖らせた。


「裕理が喧嘩強いのって、ハルちゃんを守るためでしょ?」


「どうかな」


「頭いいのだって、ハルちゃんがわからないとこあったときに教えられるようにでしょ?」


「さぁ?」


 口元を緩め肩を竦めた裕理。

 変なトコが素直じゃないのよね。


「これが流行りのツンデレってやつなの?」


「いや、ツンデレではないけど」


「じゃあ……最強の幼なじみキャラってとこかしらね」


 乙女ゲーに出てきそう。

 こういう発想は、明らかに裕理の影響。

 自分に呆れてため息を吐いた。


「……俺が最強の幼なじみキャラなら」


 裕理は考え込むように目を伏せると、アタシへと弱々しい笑みを浮かべた。


「奈津乃は不器用な王子様キャラだよ」


「……」


 自然に会話は途切れ、アタシたちは黙って歩き続ける。

 コンビニの看板が自己主張激しく光るのを見付け、アタシは駆け出した。


「奈津乃?」


「そこまで競争! よーいどん!」


「おい、いきなりすぎだろ!」


 一足遅れて裕理も走りだす。

 とにかく走りだしたい気分だった。

 身体の中の有り余っている力を全て使い果たして、空っぽになりたかった。

 頭の中で考えた未来や不安を、全て追い出すようにがむしゃらに足を進めた。

 変わりたくない。

 このままでいい。

 学生生活をずっと続けたい。

 叶うわけない願いを全て消化するように、アタシはただ走った。



 走って汗をかいた身体に、コンビニの冷房は気持ちいい。


「あぁ~、冷たい」


「子供みたいなことやってないでさ……」


 アイスの入った商品棚に手をくっつけて涼んでいたら、裕理に呆れた顔をされた。

 アタシは手を離すと、大人しくアイスを選ぶ。

 ハルちゃんはバニラか苺……。


「あ」


「どうした?」


 アタシは視界に入ったカップアイスを手に取る。

 覗いた裕理は、首を傾げていた。


「それ、新商品? 奈津乃、マンゴー好きなの?」


 そう、アタシが手にしたのは新商品のマンゴー味。

 夏限定と、黄色い字で大きく書かれてる。


「アタシじゃなくてハルちゃんが、こういう季節のもの好きなのよ。あー、どっち買ってこう……」


 気分は確実にバニラか苺のはず。

 だけど、こっちを買っていけばハルちゃんは凄く喜んでくれる。

 ハルちゃんのために何かをするなら、一番嬉しいことをしてあげたい。


「バニラとマンゴー買ってけば?」


「そんなことしたら、ハルちゃん逆に気にしちゃうよ!」


 目に見えるように気を遣うとハルちゃんはそれに気付いて、申し訳ないって思っちゃうから。

 ハルちゃんには、純粋に喜んでほしいの。

 アタシはしばらくアイスたちと睨めっこをし、一つの案を思いつく。


「マンゴーと苺を買っていけばいいのよ」


 裕理に言うと、彼は曖昧に頷いた。

 きっとアタシの素敵な作戦がわかってないのね。


「だからね、ハルちゃんに苺、アタシはマンゴーを買ってくでしょ? で、半分こすればいいのよ」


 アタシはバニラより苺のほうが好き。

 ハルちゃんもそれをわかっているから、アタシが苺とマンゴーの二つで迷ったって言えば、快く半分こしてくれる。

 笑顔で二つのカップを手に取ると、裕理は唖然とした顔でアタシを見つめてた。


「奈津乃って……実はかなりの気遣い屋だよな」


「そんなことない。好きな人にだけよ」


 好きだから、思いっきり喜ばせたいの。

 それに、好きな人のためならどれだけ気を遣っても苦にはならないもの。


「裕理は? 何がいい?」


「俺はこれ」


 手渡されたのは、生クリームたっぷりのプリン。

 あまりにも可愛いので、つい吹き出してしまう。


「失礼だな。これ、美味いんだよ?」


「ごめん、ごめん。裕理もかなりの甘党よね」


 アイス二つとプリンを手に、アタシと裕理はレジへと向かった。

 早くハルちゃんの顔が見たいのに、寝呆けた店員の遅いレジに、苛立ちが爆発しそうになった。



 帰り道は、行きよりもずっと速かった。

 他愛ない会話が続いていたのに、足は無意識に早足になっていたんだろうなぁ。

 ハルちゃんたちの部屋は、三階。

 もちろんエスカレーターなんてないから、アタシたちは階段へ向かった。

 階段へと差し掛かったアタシたちは、同時に足を止める。


「……え?」


「……人?」


 お互いに、開いた口を閉じることが出来ないまま、立ち尽くした。

 裕理の手に持っていた袋を握る手が緩んでしまい、落ちかけた袋をアタシがすかさず掴む。


「っと、悪い」


「いいけど……あれって……」


 袋を掴んだまま、アタシは階段から目を逸らせずにいる。

 正しくは、階段にへばりついて倒れている人から、だ。


「倒れてる……?」


「……俺が見てくるから、奈津乃はここで待ってろ」


 アタシが頷いたのを確認して、裕理は駆け足に倒れている人の元へと近づいた。

 遠目からだからよくはわからないけど、たぶん男の人。

 それも、アタシたちよりずっと年上。

 スウェット姿で、髪はうっすらと茶色に染められている。

 裕理は慎重すぎるほどゆっくりと男の人の手を取り、手首に触れた。

 そして、顔を上げると軽く微笑む。

 死んでるわけじゃないみたい。

 そのまま裕理は俯せに倒れている男の人の身体を引っ繰り返す。

 途端に、裕理は目を丸くしまばたきを繰り返す。

 さらに、何度も目を擦ると慌てた様子でアタシに手招きする。


「どうしたの?」


 駆け寄ったアタシも、その人を覗き込む。

 アタシの予想通り、随分年上そうな男の人。

 三十代くらいかしら。

 軽くクセの付いた髪が無造作に伸ばされていて、肩に掛かっていた。

 身だしなみを気にしない人だってことが、一目でわかる。


「この人……知り合いかもしれない」


「はぁ?」


 裕理はその人の身体を背中に乗せると、階段を上り始めた。


「ちょっと、裕理、大丈夫!?」


「大丈夫、この人見た目よりずっと軽いから」


 嘘を吐いているようには見えないけど、大人を担いで平気なわけがない。

 アタシはすぐに後ろに回ると、一段下から男の人の身体に体当たりするように持ち上げる。

 少しくらいは協力しないと、気分が悪いじゃない。


「悪い、奈津乃。とりあえず俺の部屋に運ぶから」


「わかった」


 階段を上る足音を気に掛ける余裕なんて、アタシたちにはなかった。



 謎の男を裕理の部屋に運ぶと、アタシは裕理に言われてハルちゃんを呼びに行った。

 もちろん、アイスたちはその前に裕理の部屋の冷蔵庫に放り込んだ。


「……ゆた兄?」


「だよなぁ……」


 ハルちゃんは裕理の部屋に入るとすぐに裕理に手を引かれ、男の顔を確認させられた。

 どうやら、本当に知り合いらしい。

 ハルちゃんは横に寝かされた男の顔の隣に正座して、まじまじと顔を覗いている。

 アタシは立ったまま、座っているハルちゃんの上から改めてその顔を見つめる。

 ぱっと見た感じで三十代を想像したけど、二十代後半でも可笑しくはないように見える。

 寝顔からじゃ大した判断は出来ないけど、普通に格好良いお兄さんって感じかしら。

 服装は適当だけど、髪はさらさらだし肌も綺麗。


「ハルちゃん、この人いくつ?」


「え? んー……俺たちの十三か四歳上だったかな?」


 嘘。てことは、三十三か四歳?

 ハルちゃんは確かめるように裕理を見上げた。

 裕理も、「あぁ」と頷く。


「俺たちが幼稚園のときに専門学生だったから、今は三十四歳くらいだろ」


 そんなに小さい頃の知り合いって、どういう関係かしら?

 裕理はハルちゃんの反応に安心すると、寝ている男をアタシたちに任せて台所へと消えていった。

 アタシは、ハルちゃんの背中に覆いかぶさるように抱きついた。


「奈津乃?」


「ハルちゃん、この人どういうお知り合い?」


 首を傾げてハルちゃんの目を覗き込めば、ハルちゃんは目線を天井へと向けた。


「私たちの近所に漫画の専門学校があってね、この人はそこに通ってた人」


「本当に? 四歳頃の記憶なんて曖昧じゃない?」


「曖昧だけど……結構遊んでもらってたし、ゆた兄顔変わってないから間違いないと思うよ」


 ふぅん、と頷いてアタシは男の顔をまた見つめる。

 二十代後半にも見える顔が昔からってことは、ふけ顔だったのかしら。

 どうでもいいことをぼんやりと考えていると、耳元でハルちゃんが「あ」と声を上げた。


「名前は由多郎さん。だから私たちはゆた兄って呼んでたんだ。名字は……えっと……」


 なんだっけ、と首を捻らすハルちゃん。

 アタシはその首にじゃれついて、ハルちゃんが思い出すのを待った。


「神原……」


 不意打ちのように、か細い声が男から聞こえた。


「神原……由多郎……」


 眠っていた男は薄目を開け、ぼそぼそと耳を澄まさなければ聞こえないほど小さな声を出す。


「そう、神原……! て、ゆた兄? 大丈夫?」


 あまり大きな声は出さずに、ハルちゃんは男の顔を覗き込んだ。

 男はまだ半分夢の中にいるみたいで、ぼんやりとハルちゃんを見つめている。


「……お腹空いた」


「わかってる。今ユーリが何か持ってくるから」


 お腹空いた。

 それだけ言うと、再び男は目を閉じてしまう。

 アタシは眉をしかめてしまう。


「大丈夫なの? この人」


「ゆた兄は昔からこうなんだ。物事に熱中しやすくて、ご飯とか睡眠とか忘れちゃうんだよ」


「……行き倒れ?」


 この日本で、そんな馬鹿な。

 でも、実際に倒れていたんだし、何よりハルちゃんが言ったんだから嘘なわけない。

 昔からこういう人だったってことは、まだ小さかったハルちゃんたちにも迷惑掛けてたのかしら。

 ろくな大人じゃないわね。

 ため息を吐くと、ハルちゃんがびくりと肩を震わせた。


「びっくりした……!」


「あ、ごめんね。息、かかっちゃった?」


「大丈夫」


 ハルちゃんは優しく微笑んで、アタシの頭を撫でてくれる。

 こんなふうに撫でてくれる人って今までいなかったから、余計にアタシはハルちゃんに惹かれてしまう。

 少しだけ、強く抱きついた。

 ハルちゃんは気付かないくらい、本当に、ちょっとだけ。


「ゆた兄、どう?」


 裕理が台所から、おにぎりを握りながらアタシたちのいる部屋へと移ってくる。

 手の中で転がるおにぎりは綺麗に三角形で、何でもそつなくこなす裕理だけど、何だかそれが意外だった。

 料理のイメージがなかったからかな。


「さっき少しだけ起きたよ。やっぱりお腹すかせてた」


 苦笑してみせたハルちゃんに、裕理も頬を緩める。

 そこには確かに、二人だけで歩いてきた時間が存在していて、アタシだけがのけ者だった。

 そう、アタシは、哀しいくらいにハルちゃんの人生のほんのちょっとしか一緒にいない。

 それを思い知らされて、胸が痛んだ。

 二人が心配そうに男を覗き込んでいるのを、アタシはどこか遠くで見つめているような気がした。

 クーラーの動いている音の中に一つ、小さな小さな音が交じり始めた。

 ぽつ、ぽつと何かが空から落ちてきて当たる音。

 雨だ。

 アタシはベランダを見つめる。

 カーテンがかかっていて、本当に雨が降っているのか確認は出来なかった。

 七夕は、もうすぐ。

 ほらね、やっぱり願いを叶えるのはお星さまじゃなくてアタシたち自身なのよ。


 まるで流れ星のように突然に現れた“神原由多郎”という男に、アタシは何かが変わる予感がした。

 変わらないでという願いが、いとも簡単にぶち壊される。

 そんな気がした。


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