096
綴 緑子の母は、あの事件以来あたしを嫌っていた。
大事な一人娘を奪われた、しかもあたしと一緒にいた時にいなくなった。
カーキ色のブラウスを着て、ミドルヘアー。髪が肩あたりまであった。
顔だけ見ると、少しシワも目立つけど緑子に似ていた。
なんで何もしてくれなかったのだろうか、そんな怒りを感じられた。
あたしに対する怒りは、顔には出さないけど言葉で責めてきた。
「緑子がいなくなったのに、何あなたは遊んでいるの?」
「遊んでなんか……」
「嘘よ!学校もロクに行っていないんでしょ、あんた」
「……はい」
俯くしかなかった。すぐに緑子の母が、険しい顔であたしの肩を掴む。
「ねえ、緑子はどこなの?」
「ごめんなさい。前に全て話したことが全部よ」
「ゲームの中に閉じ込められた?そんなの、信じるわけないじゃない」
「でも……あたしからはこれ以上何も言えないわ」
「緑子……」
その場で泣き崩れた、緑子の母。
言葉を信じてくれない、荒唐無稽な話だとは私も思う。
だけどそれでも、今のあたしには何もできない。
あたしにアイドル名刺を渡そうとした、親子連れは離れていく。
子供の憐れむ目が、あたしに痛く刺さった。
「ごめん……なさい」謝るしかできない。
「奥津さん、あなたに謝られても娘は帰ってきません」
「はい」
「奥津さん、ちゃんと学校に来てください」
「学校ですか?」
いきなり母に言われて、あたしは戸惑った。
正直、学校に行けば嫌なことを思い出す。
辛さから逃げるように、引きこもりの道をあたしは選んだ。
「新しく探偵の人を雇いました。
話をするべく土曜日に、学校で先生交えて聴取することにしました。
絶対に来てください。あなたにも、証言してもらいます」
「あたしは、今まで言った言葉が全てで……」
「ならばそれを、言ってください。では、失礼します」
緑子の母は、最後は強い口調であたしに言い放った。
あたしには、選択肢がなかった。




