095
あたしがゲームを終えると、夕方のスーパーに戻ってきた。
スーパーには、やはりあまり人がいない。
夕方の時間、あたしはゲームから出ていた。
『タマドルカード』を見ながら、あたしはじっと見ていた。
そんな何気ない瞬間。
「ねえ、お姉ちゃん」
あたしは、小さな子供に声をかけていた。
振り返ると、そこには若い大人の女性と娘がいた。
若い大人の女性は、いかにも母親っぽい格好。
ワンピースに、エプロンを着た女性は、あたしを睨む。
だけど水色のワンピースの女の子はあたしを見て、笑顔になった。
「おねえちゃんも『タマドル』やるんだ」
「たまたまよ」
すると、小さい女の子が母親に頼んでカバンを取り出す。
その小さなカバンから出てきたのが、『タマドル名刺』だ。
「これ、よかったら交換しない?」
無垢な顔で、あたしに名刺を差し出してきた女の子。
女の子のタマドル名刺は、あたしのと違ってあたしのライブに参加できない。
「あたしなんかでいいの?」
「どうして?」
「どうしてもよ」
あたしが拒否すると、女の子が悲しそうな顔を見せていた。
「うん、だってタマドルは楽しいものだよ。友たち集めが出来るゲームだし」
「友達集め?」
「そうだよ、友達」
女の子の顔が一瞬、ミーコに重なった。
穏やかなミーコが、あたしをこのゲームに誘った時と同じだ。
「一緒にタマゴアイドルをしない?カスミンは友達少ないから」
そんなミーコの言葉で、あたしはこのゲームを始めた。
「うん、あたしのでよければ」
あたしは、アイドル名刺を持っていた。
それを取り出そうとしたとき、あたしの前に大きな影ができた。
「あら、今日は学校が早いのですか?奥津さん」
そう言いながら出てきたのが、一人の主婦だ。
その女性を、あたしはよく知っていた。




