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『6月12日』
あれから二日後。文化祭が終わって日曜日になっていた。
ボクは、駅前のカフェにいた。
この日は、夕方からゲリラライブをする。
そのために、昼間は駅近くのカフェで作戦を練っていた。
そこにいつも最後に来るのがボクだ。
今のボクは変身していない、通常通りの格好。
ズボンに、カジュアルなボーダーシャツといういつもどおりの格好だ。
短い髪は、いつもどおりのクセ毛だ。
「おそいっ」
相変わらす虎太郎は、不機嫌そうにボクを出迎えた。
ドクロのシャツに短いズボンとラフな感じの虎太郎は、目が険しく釣り上がった。
野性味ある個性的な虎太郎は、腕が意外と太い。
「まあまあ、『ノットシステム』の紅一点だから」
「何が紅一点だ」
茶色のベストを着ていた隆聖、長いズボンを履いていた。
ちょっとだけ隆聖が、暑苦しそうに見えた。
隆聖がなだめ、虎太郎が悪態をつく。相変わらずの光景だ。
「今日はゲリラライブだ。一応六時から二時間の予定。
曲は持ち曲四曲を四セット。MCは恵でお願いな」
「うん、わかっている」
「あとは、曲の順番だけど……」
「その前に、その格好はなんだ?」
虎太郎がすかさずボクに、指摘を入れてきた。
「ああ、いつもこの格好なら動きやすいから」
「だけど、なんか男っぽいっていうか。ちょっと華がないんだよな」
「華なら……ボクに考えがあるんだ」
ボクはそう言いながら、あの『トランスカード』を取り出した。
「今のボクには切り札があるんだ。まかせてよ」
そう言いながら、ボクは無邪気な笑顔を見せた。
「切り札って、それはガキの頃にやっていたおもちゃのカードじゃねえかよ」
「おもちゃじゃないよ、本物だから。
ねえ、虎太郎。この辺でゲームセンターあるところ知らない?」
「ああ、駅前の西口にたしかあるが」
「そっか、じゃあちょっと行ってくる」
ボクはそう言いながら、軽やかな足でカフェを後にした。
「お、おいっ。メグッポ!」
虎太郎は最後にボクの背中に、叫んでいた。