089
『6月5日』
この日の夜には、あたしはいつもどおり辛気臭い部屋にいた。
机に座って、ぼーっとしていた。
暗い部屋の中で、あたしはずっとタマドルカードを見ていた。
学校には行かなくなった。
臨海学校の一件で、あたしは人間不信になった。
あたしは、追い込まれたからだ。
そして、学校の行かないあたしは家で勉強をしていた。
いつもどおり教科書を開いて、勉強をする日々。
そんな日曜の夜に、あたしのスマホが急になんの前触れもなくなった。
「ミーコ……」あたしはスマホを出た。
「もしもし……」
「ああ、繋がるようね。良かったわ」
「ミーコ、どこにいるの?」
「あのさ……ハコベという人間を知っている?」
「うん、名前だけは聞いたことがある」
「なら、お願いがあるの」
「お願い?」
「ハコベを、ここに連れてきて欲しい」
一瞬の言葉に、あたしは驚きがあった。
「どういうこと?」
「彼女は、私を閉じ込めた悪い奴なの。
だから彼女を捕まえて、私のところに連れてきて欲しい。
そうすれば私は、カスミンのもとに帰れるのよ」
「そうなの、うん。だけどあたしはわからない」
「そうねえ、カスミンのそばにいるイースターはいるかしら?」
「うん、いるけど」
「その子に聞いたほうがいいわ」
「イースターもわからないって言っているわ、だいたハコベって……」
「メイド服……」
しかし、そのあとは急に電波が悪くなって切れてしまった。
どうやら、圏外になったようだ。
あたしはリダイヤルをしたが、電話は全然でなかった。
その様子を見ていたのが、タマドルカードのイースター。
「なんの話をしていた?」
「ハコベを探して」
「何を言っておる……」
「ハコベを探して、ミーコを連れ戻すわ」
あたしは右手を握りながら、怒りを顕にした。




