088
ミーコと別れたのは、これが二度目だ。
この時も、ミーコが戻ることはなかった。
疲れた顔で、自分の部屋に戻っていた。
蛍光灯一本で、薄暗い部屋はぐちゃぐちゃだ。少し臭い。
あの日から、まともに掃除すらしていない。
ホコリがタンスの上に貯まり、机は汚い。
ベッドもあるけど、布団がぐちゃぐちゃだ。
そして、いつもどおり学習机に座った。
「どうして……」机に座ると、写真立て。
だけどその写真立てのガラスは、ヒビが入っていた。
写真立てに写るのは、親友のミーコ。写真の彼女は、いつも笑顔でピースしていた。
その写真立てのそばには、あたしのタマドルカードも置いてあった。
机に頭を伏せて泣いていた。
あの時の悔しさが、今でも蘇った。
そんなあたしの足元には、ずっと付いてくる謎の色付きタマゴ。
「お主は、あのものと知り合いか?」
「なによ、あんた?」あたしは泣いていた顔を上げて、睨んだ。
「おお、これはタマドルカードじゃな。ふむ、このカードをもっておることは知っておろう」
「イースターとか言うの?」
「そうじゃよ」タマゴのイースターは、胸を張った。
タマゴアイドルのサポートキャラの名前が、『イースター』だ。
「この体は、ちと目立つからのぅ。カードに入らせてもらうぞ」
「なにそれ?」
などというが、机の上に乗っていたタマドルカードのそばにいたイースター。
そのまま、イースターがタマドルカードに吸い寄せられた。
イースターの体が消え、タマドルガードの中に入っていた。
「これでよかろう」カードと同化したイースターが、言ってきた。
「何をしたいの?」
「いや、助けようと思ってな」
「助ける?」
「お主は何か変化を、求めてはおらぬか?」
イースターの言葉に、あたしは眉をひそめた。
「そんなものはない」
「そうか?そうは見えないが」
「ミーコは無事なの?ミーコを返して!」
「返すことはできない、というより朕たちはそのものに命を狙われているから」
「嘘よ、あのコウモリの味方でしょ。
あのコウモリ、タマゴアイドルに出てくるじゃない」
あたしはタマゴアイドルを、前から知っていた。
ゲームの設定を、あたしは覚えていた。
『タマゴアイドル』は、究極のタマゴアイドルを目指すゲーム。
タマゴアイドルのあるタマゴ王国は、夢や希望を失っていた。
夢や希望を失わせる、『カクイドリ』と呼ばれるモンスターだ。
そこでタマゴ王国の女王は、王国に輝きを持たすためにアイドルを異世界に求めた。
それが、タマゴアイドルのプレイヤーの設定。
「ただの設定でしょ、実際のゲームはアイドル育成ゲーム。
ガチャを引いて、衣装を集めてコーデを作る。
コーデを作って、友達を作ってすごいライブをして、グッドを集める。
グッドを集めて、ランクを上げて、最終的にタマゴアイドルを目指す」
「ふむ、あたから間違えではない。
じゃが朕はさらに、お主を変身させることができる」
「変身に興味はない、あたしはミーコが返ってくればそれでいい」
あたしは、それだけがずっと望みだった。
「でも、しばらくは無理じゃろう」
「なぜ?」
「あの者が現れたのは奇跡だ、ハコベ様なら何かわかるかも知れぬが。
どこにいるのやら、それとも……」
「探しなさい」
「そうじゃな……無理じゃ」イースターは拒否した。
「じゃが、タマゴアイドルをやればまた会えるかも知れぬの」
「そう……」
あたしは、そう言いながらタマドルカードをじっと見ていた。
そこには、キラキラのホログラムに一人の女の子が笑顔でポーズをきめていた――




