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変身少女のタマゴ系ライブ  作者: 葉月 優奈
七話:『奥津 霞』のタマゴアイドル:前編
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086

――一年前のあの日、あたしは走っていた。

それは暗い夜の町、だけど街並みが日本ではない。

ヨーロッパの街並みのような、西洋風の住宅が立ち並ぶ。


静かな街をあたしは、二人で走っていた。

セーラー服でポニーテールに髪を縛ったあたしと、前にはミドルヘアーのセーラー服の少女。

彼女は (つづり) 緑子、あたしの親友だ。


「霞っ!こっちに逃げよう」

緑子が、私を誘導した。

彼女の手を引かれて、石畳の道を走っていた。


「光は見えるから、あそこを目指せば……」

「そうね。坂の上を目指しましょ」

「うん」あたしたちが行く先は坂の上にあった。

建物に明かりはないが、坂の上だけは光っていた。


「だけど……あたしたちは閉じ込められたのよ」

「諦めないで、カスミン。

絶対に出られるわよ、ゲームの中に閉じ込められるなんてありえないから」

「そうだね、うん」

緑子(ミーコ)は笑顔で励ましてきた。


あたしたちは、『タマゴアイドル』というゲームで閉じ込められた。

きっかけは、あたしが読み込ませたカード。

ミーコの名刺も読み込ませた瞬間、あたしとミーコがこの世界にワープしていた。


人の住んでいない闇の街の世界。

そこであたしたちは、彷徨っていた。


「ほら、あそこに光があるでしょ」

唯一の光を目印に、坂を一気に駆け上がった。

そこは、街の中でも小高い丘。大きな木が立っていた。

やがて、そこに近づくと木の下が光っているのが見えた。


「あれって……出口じゃない?」

「うん、そうだね」

走りながら、あたしたちは走って木に近づく。


「あっ、だけどてんてn待って!」

前で手を引くミーコが、突然立ち止まった。

「どうした……」

「の」とあたしが言おうとした刹那、ミーコは突然掴んでいた手を離した。


「えっ!ミーコ?」

「逃げてっ!」

ミーコに手を離されて、あたしは思わず後ろに下がった。


次の瞬間だった、ミーコの足元から黒い何かで彼女が覆われたのだ。

ミーコの姿が、黒い何かで見えなくなった。

それはまるで煙……いやコウモリの群れのようだ。


「ええっ!」

「前を向いて、カスミンっ!」

「でも……」あたしは、一瞬のことで驚くしかなかった。


「ここから前に……」黒いコウモリに囲まれても、彼女の声が聞こえた。

「ミーコっ!」

「前に行って!」彼女の悲痛な叫びに、あたしは「はいっ」と頷くしかない。

そしてあたしは、前を向いた。

前には、大きな木が一本たっていた。

立っていた木の、真ん中が大きな空洞が空いていた。

そこがずっと光っていたのだ。あたしはミーコに背中を押されて気の前に立っていた。


「ミーコ……ここから」

「もう……」

黒いコウモリに覆われたミーコから、声が聞こえなくなった。


「ミーコ!」

あたしは叫びながら、光の中に飛び込んだ。



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