006
夜の教室は思いのほか静かだ。
だけど、ゲームの中ということもあって教室自体が背景になってあまり気にならない。
画面にボタンが出てきて、スマホ画面のようにタッチしながら進んでいく。
撮影が終わると、イースターはカメラを見ていた。
インスタントカメラなのか、すぐに写真が出てきた。
いや、そこに出てきたのは写真ではない。一枚のカードだ。
「これがお主だ」カードを手渡すイースター。
カードを見て、ボクは思わず声を上げていた。
「これ、かわいいっ。すごくいいよ!」
スクールコーデと言われた、ピンク色のブレザーを着た女の子。
さっき撮った可愛らしいポーズをした女の子が、キラキラ背景に写っていた。
「次は、ライブをしてみようか?」
「ライブ?」
「ライブをすれば、さっき言った金髪が手に入るかも知れないぞ」
「ほんとに?やるっ!」
ボクは食い気味に言っていた。
それを見て、目の前のイースターは小さな顔が悪人顔に見えた。
「どうしたの?」
「ライブは簡単だぞ。ライブの時には曲が流れる。
流れた曲に合わせて、自分の周囲に光の玉が出てくる。音符玉というのだがな。
上・中・下で左右に玉が六ヶ所出てくるので、その玉を触れるように踊ると点数が稼げる。
『グッド』というのだが、グッドをたくさん稼ぐとランクアップできる。
ちなみに、ライブは曲が終わるまで続く。曲の強制終了は、通常ライブでは無い」
「えーと、どういうこと?」
「要は音が出る玉を触ることで、ダンスになるということだ。
ただし、ダンス中には四角の枠に足を……」
「やってみるね、ここにたてばいいの?」
そう言いながら、ボクは黒板の前に立った。
「ああ、では曲が流れるから」
「うん」
無人の教室に、突然曲が流れた。
曲が流れると同時に、ボクの口が勝手に歌いだした。
ボクの右肩より少し離れたところに、バレーボール大の赤い玉が浮き上がるように出てきた。
それを右手で弾くと、急に教室が軽くなった。
(ええっ?)声にならない驚きがあった。
目の前には、色とりどりのタマゴがライブを聞いているかのようだった。
タマゴ自体が派手に光っているし。
それは曲に合わせて、歓声を上げる観客だ。
その一方で、今度は左真ん中に玉が出てきた。
玉に触れることで、曲に合わせて踊っているかのように見えていた。