058
この部屋には、今布団で眠るハコベと私しかいない。
だけど、タマゴが動いて喋った。それを見て、私は驚いていた。
不思議なタマゴは、喋るし手足も生えていた。
「どうやら、このタマゴを、イースターをあなたは見えるようですね」
「はい、初めて見ましたけど……なんですかこのタマゴは?」
「うむ、これは彼女に託すのが良いかと思うぞ」
「わかりました、実は私たちはこの世界の人間ではありません」
「この世界の人間ではない?」
「はい、この子はスチュワート・フォン・ゴマータキヤ二世です」
ハコベが、緑色のタマゴを優しく撫でていた。
「イースターではないのですか?」
「イースターとは守護卵の一つで、この子の本名はスチュ……」
「よくわからないので、タマちゃんと呼びますね」
やはり私は最初から同じように、『タマちゃん』と呼んでいた。
「まあ、よい。それで、お主には助けてくれて礼を言う。感謝する」
「今はタマゴも話す時代なのですね」
「まあ、そういうことにしておこう。それで話は単純だ。
お主にあと三つの卵……を探して欲しい」
「タマちゃんですよ」
「タマちゃん……そうだな、タマちゃんだな」
私が言うと、ハコベはくすりと笑っていた。
抱かれていた緑色のタマゴは、頭を動かしたように見えた。
「でも、イースターってどこにいるんですか?」
「それはわかりません。ですがこの辺にいるのは、間違いないようです」
「みんな、喋ったりするのですか?」
「はい、歩いたり喋ったりできます」
ハコベはそう言いながら、タマちゃんを撫でていた。
私はそんなタマちゃんを見ながら、難しい顔を見せていた。
「タマちゃんをでも、探せるのでしょうか?」
「具体的には自分が探します。探すのは自分が一番得意です。なので……」
「なので?」
「自分に協力していただけないでしょうか?」
「協力?ですか」私はじっとハコベを見ていた。
「何を協力するのですか?」
「そうですね、ここの世界のことを教えて欲しいのです」
「えと……ここの世界と言われても……まさかほかの世界から来たのですか?」
「はい」あっさりと答えたハコベ。
ハコベの姿を見て、なんとなく困っているのが見えた。
「よくわかりませんが、あなたが困っているのなら私は助けましょう」
「ありがとうございます。ただ、タダでというわけにもいかないので自分を使用人として使ってください」
「使用人って……」
「いえ、これぐらいはさせてください。どうした、イースター?」
「女王様、もしかたら彼女には力があるやもしれません」
イースターは一言告げると、私のそばに歩いてきた。
目の前に立って、小さな手を伸ばしていた。
「力?」
「お主が朕を見られるのなら、お主に変わりたい何かがあるのではないか?」
「え?変わりたい何か?」
「早い話だが、朕はお主の希望を叶えることができるかも知れぬぞ。
今の自分を変えたい時、力を与えてやろう」
そういいながら、タマちゃんは怪しく微笑んでいた。
「うーん、私は特にはないです」
「そうかそうか、お主は好きな奴がおるな」
「えっ、どうして……って、きゃあっ!」
私が思わず声を上げた、タマちゃんの頭らしきものが私の胸に入り込んできた。
タマゴの先端を、私の体に擦り付けてきた。
痛みも、何もない。むしろ映像か何かが、私の体に通り抜けているような感覚だ。
「申し訳ない……このイースターはとても好奇心旺盛で」
「いえ……でも私にはいます」
それと同時に、私は顔を赤くした。
大好きな先輩のシルエットが浮かんで、私の胸がドキドキしていた。
「さすがじゃ、お主の為に朕も協力しよう。
なに、必要なものはたった二つ。一つはお主の意志。
そしてもう一つは……『タマゴアイドル』と呼ばれるゲーム機じゃ」
そう言いながらタマちゃんは、小さな両手を広げて胸を張っていた――




